中編
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し、相手のリーチを少しでも短くするのが定石だ。ことにナルガクルガの尻尾には伸縮性があり、見た目以上に間合いが広い。
八相に構えた太刀の切先を後方へ向け、振りかぶる。疾走の後、左脚で踏ん張っての急停止。大木さえ一薙ぎにする長大な尾目がけて、加速を利用し太刀を振り下ろした。
しかし。その一撃は空を切り、刃は虚しくも地面に食い込むだけだった。ナルガクルガが跳躍したのである。
慌ててその動きを目で追うと、迅竜は身を翻し、ルーヴェンの遥か後方へ着地していた。その尻尾が上を向いて回転し始め、シュルシュルと独特の風切り音が聞こえる。尻尾の先端、折り畳まれていた棘状の鱗が逆立ち始めた。
「逃げて!」
ナルガクルガはリオレウスと違いブレスを吐かない。その代わりに別の飛び道具を備えている。ルーヴェンも知識として知ってはいたが、戦った経験のあるピリカレラの叫びでようやくそれを思い出した。
身をかわした瞬間、防具の肩を棘が掠める。遠心力によって射出されたナルガクルガの尾棘が、ルーヴェンの背後の木々に突き刺さった。掠めたヴァイクシリーズの肩にも傷ができている。まともに喰らえば防具を貫通していたかもしれない。
ピリカレラが木々の合間を走りながら弾弓を放つ。彼女の腕は確かだった。ナルガクルガもまた激しく動き回ったが、ピリカレラは的確に頭部へ命中させた。厄介な弓使いに対し、迅竜は威嚇の唸り声を上げて駆け出す。
ルーヴェンはその側面を取ることに成功した。ナルガクルガの意識がピリカレラに向いている今、再び尾を狙うチャンスだった。
しかしルーヴェンが間合いを詰めた瞬間、竜は黄色い瞳を彼の方へ向けた。構わず尻尾目がけて太刀を振りかぶる。
迅竜の体が反転したのはその瞬間だった。ルーヴェンの一撃は紙一重でかわされ、またしても刃は空を切る。そしてナルガクルガは振り向き様、前足を彼の脇腹目がけ突き出していた。
「うッ……!?」
短く、鋭く繰り出された一撃。硬い魚の鱗で作られた防具は飛竜の爪を通しはしなかった。しかしルーヴェンはその衝撃に耐えきれず、地面に倒れ込んでしまう。
――『後の先』を取られた……!?
ナルガクルガは最初からルーヴェンの方を狙っていたのだ。剣を使うハンターはまず自分の尻尾を狙ってくることを知っており、わざと隙を見せて攻撃を誘った。生粋の狩人である飛竜は、獲物を狩る瞬間が最も狩られやすい時であると分かっていたのだ。
予想以上の狡猾さに驚愕しつつも、ルーヴェンは受け身を取って起き上がろうとする。だがナルガクルガは一鳴きして跳躍した。黒い巨体が宙を舞う。長大な尾が鞭の如くしなり、上空からから振り下ろされる。
咄嗟に地面を転げて回避を試みるが、間に合わなかった。地面を這っていた蔦が防具のヒ
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