第四十七話 院長の話その八
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「多くの孤児院が宗教団体が運営しているけれど」
「その宗教団体が、ですか」
「お金がないところが多いからね」
「それで、ですか」
「何処も厳しいんだ」
「そうなのですか」
「よく坊主丸儲けっていいますけれど」
寺の娘になっている向日葵が言うことはというと。
「実は違いますからね」
「うん、大抵のお寺や神社、教会はね」
「慎ましやかですからね」
「そんな。悪どく儲けてる団体とかはね」
「インチキですから」
「そうした団体は論外だよ」
詐欺団体そのものである、そもそも金儲けを目的として行っているのだから金を持っているのも当然である。
「けれど大抵のお寺とかはね」
「私のお家もそうですし」
「君のお家もなんだ」
「お寺です」
向日葵は院長ににこりと笑って答えた。
「貧乏ですよ」
「自分で言うんだね」
「本当のことですから」
向日葵はあっけらかんとしたものだった、スパゲティを食べるその手も口もその勢いが全く止まっていない。
「うちはお金ないです」
「そうだね、だからね」
「殆どの孤児院はですか」
「うちより遥かに苦しいんだよ」
「じゃあうちはか」
ここまで聞いてだ、薊はあらためて言った。
「かなりましなんだな」
「建物も建て替えてもらったりしているからね」
「そうなんだな」
「うん、だから安心していいよ」
「これからのこともか」
「八条グループは慈善事業にも前向きだから」
これもまた企業の務めである、もっともそこにはイメージアップ戦略も入っているがそれでも善行であることは事実だ。
「だからね」
「うちはまだましか」
「無駄遣いは出来ないけれどね」
「お金は限られてますからね」
菊も話に入って来た。
「時間と」
「その二つはね」
「無茶苦茶な使い方は出来ないですね」
「誰であってもね」
このことは孤児院だけのことではないとも言う院長だった。
「そのことはね」
「そうですね」
「とにかくね」
また言う院長だった。
「うちはまだましでお料理もね」
「美味しいのですね」
菖蒲も食べつつ院長に応える。
「この通りに」
「作ってくれる先生が凄い料理上手なんだよ」
薊がその菖蒲に話す。
「相当にさ」
「だからなのね」
「その人調理師と栄養士の資格も持ってて」
「栄養のこともなのね」
「ちゃんと考えてくれてるんだよ」
「だからこのスパゲティも」
「栄養あるよ、あとこっちもさ」
見ればあるのはスパゲティだけではなかった、ポテトサラダもあった。
「用意してくれたしさ」
「サラダね」
「ちゃんとそこまで考えてるんだよ」
「スパゲティだけでは栄養のバランスが偏るわよね」
菫も言う。
「炭水加物だから」
「だからさ」
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