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お高く留まる
お高く留まる
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[1] 最後
貧困の差。ここまで開くことなんて、容易に予知できたはずなのに。
お金。一体何処まで上げれば気が済むのだろうか。
家。あんなに沢山いるのだろうか。
洋服。着飾っちゃって、中身はぎっとぎっとに汚いのに。
あーあ、一つ一つ挙げていったらきりがない。お金は人を怪物にする薬だね。
「おーい、なんか見つかったか?」
ゴミの山の中、ユウイチの声がする。僕はユウイチを目にとらえた為、首を横に振る。到底使えそうなものはない、全部持っていかれたのだろう。
「だめか…」
ユウイチは肩を落とす。お高く留まった者たちは、こんな苦労を知らないのだろう。金を手に入れるために争いあう、なんとばかばかしいことか。
僕は光り輝くビル達を見つめ、そこら辺にあった缶詰の空き缶を投げた。
人口増大。この国は全ての人間を養えるわけがなく、富裕層のみを救済し、それ以外を切り捨てた。
人口3億人。そんなのは上辺だけの話で、実際は2倍ぐらいいると推測されている。まあ、一生正確な数字はわからないだろうけど。
人口増大の一番の理由、医学の発展と心の教育のなさだ。医学の発展は確かに素晴らしかった。そう、素晴らしかったんだ。今となっちゃ、生きた化石製造装置だ。医学が発展し過ぎ、自由に出来ないのに生き長らえさせられる、とんだ地獄じゃないかい?さらに現代人の途方もない執着心がプラスされる、するとどうだ?表面に見えずとも、苦しみながら生きている人間が多くなっていかないか?そんなに苦しみながら息を引き取る顔を見たいのか?ドSなのか?僕にはわからない。
まあどーでもいいや、出生率は減る一方、ここらで滅んでくれるんじゃないですかね?
「帰ろう」
僕はユウイチに言った。

路地をちょっと入ったところにある小さな倉庫。それが僕たちの住処だ。
「お帰り」
蝋燭の明かりの中、ユウリがこちらを見て言う。
「おお、帰ったか」
寝っ転がったまま、ここの最年長である、ヨシクニおじさんが言う。
「何かあったかい?」
腕組をし、壁に寄り掛かるように立っているハルコ姉が、俺たちに訊く。
「なんも」
ユウイチが首を振り答える。
「やっぱり何もないか」
ヨシクニおじさんは起き上がり、燭台が置いてある木箱の近くに座りなおした。
「まさか蝋燭明りの下で生きることになるとはね…」
溜息交じりにおじさんは言う。
「あんたそれ言うの何回目だい」
いらいらしながら、ハルコ姉は言う。ハルコ姉は、同じことを何回も繰り返すのが、そして繰り返されるのが大嫌いな人だ。
「わりぃな」
おじさんはそう言って、再び寝っ転がった。
「二人とも、座りなよ」
ユウリにそう言われ、立ちっ放しだったことにようやく気が付く。基本的にずっと立っているため、感覚が麻痺しているのだろう。
僕とユウイチは、燭台の近くに腰かけた。
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