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IS〈インフィニット・ストラトス〉駆け抜ける者
第29話
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斉発射を回避した福音を一夏の左手から出現したエネルギーのクローが捉え、装甲を切る。何度目かのクローを回避した福音が、エネルギー弾の掃射で反撃する。

「そう何度も…、」
「一夏、任せろ!」

両足のエッジを射出、エッジの根本が合体し、翡翠色のエネルギーを放出しながら一夏の前で回転、福音のエネルギー弾を防ぐ。

「新しくなっても、燃費は悪いだろ?攻撃に専念しろ、フォローする」
「ああ。頼むぞトモ!」

四機のウイングスラスターで二段瞬間加速を行って福音を追い詰める一夏。速さも攻めも追い付かれた福音は、全方位に嵐のようなエネルギー弾の雨を降らせる。スフィアを、と思ったが、凰の叱咤で思いとどまる。曲がりなりにも代表候補生、それにアルファーもいる。

「さっさと終わらせるぞ!」
「鈴達の為にもな!」

───────────

一夏と福音を攻めるが、途中からどうも違和感を感じる。最初に作戦を聞いた時の、あの感覚だ。疑惑だけだったが、もし、この福音すらも篠ノ之博士の手が入っていたら?篠ノ之の紅椿と、博士の人間性を考えると、一つの仮説が出てくる。

「一夏!」
「なんだっ、トモ!」

零落白夜の光刃で福音を狙う一夏に、俺のやりたい事を伝える。

「福音の暴走、人為的な可能性がある!任せてもらえないか?」
「でも、鈴達が…!」
「失敗したら一夏がやってくれ。消費は押さえた、が、もう心許ない筈だ」

二次移行してもISの根底は変わらないのだから、エネルギーの残りは少ない、3分動けるかどうか程度だろう。無理はさせられない。今は一夏に下がってもらおうと説明しようとしている時に、海面から飛び出して来るISが。あれは、紅椿!?エネルギー切れしていたのではなかったのか!?

「一夏!」
「箒!?お前、ダメージは─」
「大丈夫だ!それよりも、これを受け取れ!」

篠ノ之の手が、白式の手に触れた瞬間、白式のエネルギーがみるみるうちに回復していく。紅椿の能力、か?

「万一の場合は、2人でしとめる。丹下、やるだけやってみろ」
「箒!?」
「ヴァンガードは私達のISとは毛色が異なる。やらせた方がいい」
「迷惑をかける、篠ノ之」

白式を紅椿に託し、福音に対峙する。『銀の福音』、お前も『天才の望み』に巻き込まれたのなら、

「俺に、応えろぉぉ!!」

俺の叫びに、ヴァンガードが光を放つ。角が開く、ハイパーモードの前兆。だが発するのは、威圧する黄金ではなく、柔らかく、暖かい翡翠の光。

翡翠の光が、福音に届く。そして、繋がり伝わる、福音の『意思』。聞かせてくれ、全てを!

──────────

─来ないで、来ないで!

ヴァンガードに入ってくる、福音の声。それを受け取り、言葉を返す。


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