2部分:第二章
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なことはないの」
「ないの?」
「お父さんよ」
「お父さん」
精霊であるブラッシュマンには家族というものはいない。彼だけがいるのだ。
「何かな、それは」
「私の家族だけれど」
「家族?」
「大切な人よ」
ブラッシュマンが全く何もわからないのを見てまた彼に言う。
「大切な人。私を産んで育ててくれたね」
「大切な人なんだ」
「そして村の人達も同じよ」
今度は村の人達のことも言うのだった。
「私の大切な人達よ」
「けれどその大切な人達が」
ブラッシュマンはまだ彼女に告げる。
「君に悪いことをした。意地悪をしていたじゃないか」
「意地悪って」
「君が針箱を落とした時」
その時のことを話すのであった。
「あの時早くしろとか言っていたじゃないか。あれは」
「あれは私が悪いの」
「君が悪い?」
「そうよ」
娘の今の顔は口が尖っていた。まるで鳥のように。
「私が悪いのよ。針箱を落とした」
「そうなのか」
「そうよ。私が悪いの」
あらためてこのことをブラッシュマンに話すのであった。むくれた顔で。
「箱を落としたね。わかったわね」
「そうだったのか」
「そうよ。あとね」
娘はさらにブラッシュマンに対して問う。
「皆は何処に行ったの?」
「村の皆が?」
「そうよ。何処に行ったのよ」
「まだ野原にいるよ」
ブラッシュマンは静かにこう答えた。
「嵐も終わったから。今はほっとしていると思うよ」
「だったらいいけれど」
「別に誰も困らせるつもりはないから」
少なくとも悪気はないのだ。だからこそ問題であるとも言えるのだが。
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