6部分:第六章
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うして男を誘惑して」
「とりあえずここには何もないな」
スレイマーンはその廃墟の中を見回して述べた。
「問題は奥だ」
次に奥にある扉に目を向けた。
「あそこだ」
「あそこは寝室だったんですよ」
ジンナは述べた。
「けれど入っていないです」
「何だ、そうなのか」
「もう扉を閉めたら襲ってきましたから」
「ふむ」
「それで一太刀でやって」
「そういうことか」
「それでその奥ですけれど」
「何があると思う?」
スレイマーンはジンナに問うてきた。
「勘ですけれどね」
「ああ」
「あまりいいものじゃないでしょうね」
「そうだろうな。まあ開けてみるか」
「はい」
スレイマーンが扉に手をかける。そして他の者はそれを見守る。程なくして扉の奥にあるものが姿を現わしたのであった。残念なことにスレイマーンの予想が当たった。
「うっ・・・・・・」
皆それを見て思わず顔を顰めさせた。
「やはりな」
スレイマーンもそれは同じであった。その中を見て顔を歪めていた。
「予想通りだった」
「まさかこれ全部」
「そうだ」
そこにあったのは死体であった。干からびた死体や白骨だけになった死体。様々なものがあったがどれもまともな状態ではないという共通点があった。
「あの女がしたことだ」
「グーラがですか」
「そういうことだ。人を食うのだからな」
「それでですか」
「じゃあ旦那様も」
「多分な」
答える顔が暗くなる。
「この中にいるだろうな」
「何てことだ」
マムーの店の者達はそれを聞いて大きく嘆息した。
「旦那様が化け物にやられるなんて」
「あんな素晴らしい方だ」
「夜には危険が多いものだ」
スレイマーンは述べた。
「女であってもな。それでマムーは」
「魔物の餌になったってわけですか」
「そういうことだ。しかし」
スレイマーンもまた嘆息した。
「恐ろしい話だな。このバグダートにこうして魔物がいたとは」
「ええ」
それにジンナが頷く。
「とんでもないことですよ、これって」
「だが真実だ」
彼はそれに返す。
「今ここにある屍達がな。何よりの証拠だ」
「そうですね。それにしても」
「何だ?」
「若し旦那様が気付かれなかったらどうなっていたでしょうかね、一体」
「そうだな」
スレイマーンはその言葉に応えて述べた。
「最悪このバグダートが魔物の街になっていただろう」
「魔物のですか」
「少しでも油断すればな」
彼は言う。
「そうなってしまうのだ。惑わされても」
「恐ろしいことですね」
「だからこそ常にアッラーと共にあらねばならない」
これが彼の考えであった。
「全てはアッラーの下に」
「アッラーの下に」
「アッラーは偉大なり」
また
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