第74話 後ろには気をつけよう
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武智の言う事もまた一理あった。理屈でガチガチに固められた頭の固い大人ではまず思いつかない戦法だ。それをまだ10歳にも満たない子供が見事にやってのけたのだから末恐ろしい事この上ないと言える。
「へぇ、駄目元でやって見たけど案外出来る物なんだねぇ。もしかしたら他にも色々と使えたりして」
なのははすっかり結界に夢中になっていた。敵の砲弾を防ぐだけでなくそれを弾き返す事が出来る。もしかしたら他にも応用戦術があるかも知れない。何とも奥深い話であった。そう言う奥深い事に子供はとても熱中し易い物だ。敵の砲撃の心配がなくなった途端、なのはは結界を使い遊び始める始末だった。
両側に結界を展開させて其処に飛び込む事でトランポリンよろしく飛び回っていたり結界を掴んで丸めて投げてみたりなど明らかに結界の本来の使い方とは逸脱した使用をしていたのだ。恐らく、絶対普通の人間は結界をこんな使い方をする筈がない。誰もがそう確信を持てた。
正にそんな矢先の事だった。突如として上空を小さい何かが飛び回っているのが見える。
羽虫かと思ったが違った。それは、小型の飛行型木馬を駆る侍である。しかも、その侍は右腕がなく、変わりに巨大な刀が腕の変わりかの様に生えている。
「あ! あいつはっ!!」
上空を飛び回る侍を見て、なのはは仰天した。空を飛び回っていたのは紛れも無くあの岡田似蔵その人であった。上空を飛翔しながら、反撃する事が出来ない桂派の軍艦に攻撃を仕掛けている。
それに対し桂派の攘夷獅子達は全く反撃する事すら出来ずにされるがままの状態になっていた。
耳を澄ませば聞こえてくる攘夷志士達の悲鳴と断末魔。本来ならば聞こえる筈のないそれらが今、なのはの耳にはしっかりと、それらが聞こえてきた。とても痛々しく、悲惨なのばかりであった。
なのはの中で沸々と熱い何かが湧き上がってきた。それは怒りだった。それも、とても純粋で、とても強い怒りの感情がこみ上げてきたのだ。
元を正せば自分のせいで、彼らの反撃の手段を奪ってしまった。それを、あの岡田はあろう事かまるで獲物を弄ぶかの様に蹂躙していくのだ。その行為がなのはには許す事が出来なかった。無抵抗の相手を嬲るなんて男の、増してや侍のする事ではない。
その事がなのはにとってはとても不愉快に映っていたのだ。そして、何よりもあの男には個人的に借りがある。それを返さずして終わる訳にはいかなかった。
だが、問題が一つあった。とても大きな問題である。
どうやって岡田の元へ向かえば良い。現在岡田の居る場所から今居る偽装船まではかなりの距離がある。その上此処は洋上。即ち空の上だ。飛行する手段を持っていないなのはにはどうする事も出来ない現状であった。
だが、ふと脳裏に先ほどの光景がよぎった。桂派の攘夷志士達が放った弾
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