主節・禍風と剛力
初節・迷宮の天井(あまい)に流星走る
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今度は槍を棍の様に扱い横薙ぎにするソードスキルを発動。
倒れ込む後頭部を迎え撃つように一発、無理矢理立たされたコボルドの顔面側へもう一発叩きこんだ。
「ギュゴ―――――」
そこでモンスターのHPは底を尽き、カシャアァン! と音を鳴らして体を爆散させポリゴンの破片となって……やがて消えて行った。
「フゥ〜……」
戦闘が終わるや否や男は壁にもたれ掛かる。
ポーチへ手を忍ばせ、そこからパイプらしきストローにも似た、先端から五分の一辺りまでが一回り太く、そして若干上方へ曲がっている、細長いブルーベリー色の筒を取り出して口に咥える。
一旦口から外して濃く青い煙を吐き出しながら、もう一度パイプを口へ持っていき、それを咥えたまま少女の方へと顔を傾けた。
「……お前さん、大分物騒な戦い方だったじゃないよ、ありゃ」
先の戦闘を見ていたのだろうか。そうなると戦ってからコボルドが現れるまでの数十秒の間に少女を見つけた事になるが、そこで声を掛けなかったのは知らない人物であるし当たり前の事。
だからこそ少女は、先まで影も形もなかったのが一体何時の間に、近い位置まで駆け抜けてきたのかを気にせず、男の発言に答えた。
「貴方には関係ないでしょ……他人なんだから」
「ん、まあそうだわな、けれども非効率だ。帰り道がしんどい事んなるが?」
独特な話し方の所為で少し反応が遅れたが、少女は自分なりに彼の言葉を理解し、答えても不利益は無いと踏んだか口を開く。
「問題無い、わ。帰らない……から」
「帰らねーと? 睡眠に薬の補給、武器の修理は?」
「ダメージさえ受けなければ、薬なんていらないわ……武器なら同じものを、五本買って来てある……睡眠は、安全地帯で取ってるわ」
安全地帯とは文字通りモンスターの出現し無い場所の事で、アイテムの確認にパーティーの呼吸整え、一時間程の小休止にはもってこいだ。
だが、モンスターの咆哮に剣檄の音は断続的に響き、熟睡などはとても無理。
目の前の少女はそこまで豪胆には見えない為、だからこそ疲れが酷く溜まっているのだろうと推測できる。
「あんな戦い方しとったら、お前さん何れ死ぬぞ?」
肯定しているのか否定しているのか、そこまでいまいちよく解らない男の、初めて明確な意思を持った言葉。
それに少女は数秒溜めてから、寄り感情の籠った声音で告げる。
「どうせ……どうせ、みんな死ぬ、のよ……」
「……」
「このゲームが始まってから一か月、それだけで二千人近くも、命を落としたわ。……にもかかわらず、第一層すら突破されていない、じゃない……このゲームはクリア不可能なのよ。つまり後は、何処でどう死ぬか、
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