主節・禍風と剛力
初節・迷宮の天井(あまい)に流星走る
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ない筈なそのポリゴンから見えぬ圧力を受けたかのように、グラリとよろめき壁へもたれ掛かる。
「はぁ……はぁ……」
やはりと言うべきか、彼女にとってはかなり無理な連戦を強いているらしく、肉体的疲労は無いが精神的疲労が代わりに肉体へ圧し掛かって来るこのゲーム内で、誰もが滅多に上げないであろう荒い息を繰り返し吐いていた。
現実では柄の方に重心がよっており軽く感じる為連続攻撃に向いている―――SAOでは実際に重量の軽い片手武器である《細剣》カテゴリのレイピアだが、今の彼女はその軽量な得物に幾つもの分銅が付いたが如く、持っているというよりも不安定にぶら下げている状態だ。
そこまでの状態に陥って尚、未だ戦う事を止める気配が無い。ボロボロにほつれているフードケープを揺らし、僅かに疲労したレイピアを今出せる最高の力で握り締め、壁に手を突いて押し立ち上がる。
「グウウオオオッ!!」
「ッ!」
唐突だった。背後からコボルドの雄叫びが響いた。
……完全に立て直すまでモンスターのリポップが、コボルドを動かすAIが、振り上げられた手斧が待っていてくれる訳が無い。
原則とも言えない当たり前を忘れるぐらいに、彼女は激しく疲労していたのだろうか。
それでも彼女は篝火の如く爛々と光る瞳で睨み、レイピアの切っ先を喉下へと向け、右足を動かし地を踏み、己の出せる最も鋭い一撃を打たんと構えた。
レイピアか、手斧か、少女か、コボルドか、天が勝利のほほ笑みを与えたのは―――
「フグオッ!?」
―――どちらでも無かった。
「……えっ?」
いや、正確に言うならば少女の方に微笑んだのかもしれない。目の前のコボルドはいきなり体勢を崩し、攻撃を止めさせられたのだから。
「オオオォォ!?」
左足に体重が偏り支えきれずうつ伏せに倒れ、鎧と床がぶつかり合って派手な音を立てたコボルドへ―――次いで間隙すらなく吸い込まれる、鋭く細い薄緑色の光。
「シィィイ! ジェアアッ!!」
ソードスキルのライトエフェクトが同色の光芒を引き、レイピアとはまた違うサウンドを立て攻撃が二度命中した。
ソードスキル、そして一応モンスターのモノではない声、自分を掬うように放たれた攻撃。間違い無く他のプレイヤーだ。
大凡人間が出さない奇声を上げて現れた人物に、何者なのかと姿を見る為視線を合わせて……少女は言葉を失った。
「凡人、じゃあ無し凡獣だあなこりゃ。オレちゃんにゃあ、ちょいと物足りんかね」
まず背が高いことが驚きを呼ぶ一つだ。190cm代余裕ではあろうかという長身に、おおよそゲーマーでは有り得ない筋肉質な体。
そして長い
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