主節・禍風と剛力
初節・迷宮の天井(あまい)に流星走る
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一部アイテムなどを除き、魔法の類は大胆にも排除。遠距離攻撃も種類が少なく、また威力が高くないか、格闘戦を視野に置いたものしか存在せず、つまり通常のMMOでも珍しい近接特化型のゲームだという事も相まって、興奮は否応なく増長していった事が窺える。
数ある微調整、より上の楽しみを手依拠する為のβテストを得て、いよいよ正式サービス開始の日となった2022年11月6日……皆挙ってログインしたのは言うまでもない。
彼女もそんなプレイヤーの一人なのだが、余りに危機迫り過ぎているように感じられる。
どんなロールプレイをしようとも勝手ではあるが、それにしたって空気が張り詰め緊迫する様な、まるで『命を掛けているかの様な』行動の裏に、一体何があるのだろうか。
否……『命を掛けているかの様な』ではない。
恐ろしい事に、このゲームはログアウト不可能な上、HPが全て無くなると、現実の肉体も死んでしまう―――デスゲームなのだ。
そう、VRゲーム至上期待の一作は、2022年11月6日の昼過ぎに、冥界への一本道を明確に出現させた、恐怖の牢獄と化したのだ。
ナーヴギアは頭にかぶるハードで、脳から送られる命令を延髄辺りで遮断、それをアバターを動かす電気信号へと変え、ゲーム内に反映させているという代物。
それを動かす為にはかなりのバッテリーが必要で、本体の重さの三割はバッテリーセルなのだ……が、これが彼等にとっての“爆弾”だった。
『殺す』ロジックは原理的には簡単で、いわばレンジで料理を温めるのと同じ事。脳を沸騰させ、焼き殺すのだ。
そしてバッテリーせるが三割分もあるからこそ、そして電源が繋がれているからこそ、焼却せしめてしまう事も可能なのだ。
ゲーム内からは何も分からない。本当に死んだのかどうかすらも判断できない。だが、一縷の頼りない望みと、しかと分からされた最悪ならば、どちらへ掛けるのかは明白であった。
このゲームから脱出する唯一の方法、『浮遊城アインクラッドの百層に到達し、魔王たるラストボスを打倒す』ことを成し遂げる為、今日もレベルの高いプレイヤー達は迷宮区と呼ばれる登場のダンジョンへと乗り出す。
しかしながら……それでも疑問が一つ。
クリアを目指すならばいっそ酷いほど慎重に進み、肝心な時に集中力が途切れぬ棟ペース配分に気を付け、パーティかもしくは一人でも確りとして装備を持って挑むのが定石。
だが細剣使いの彼女は先の通りな、後先考えていないハイペースな戦いだ。危険にも程がある。
大ぶりな叩きつけ三回を躱し、高速の《リニアー》を打ち込む攻防を二度行い、『ルインコボルド・トルーパー』を四散させポリゴンの欠片へと変えた彼女は、触れることの出来
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