§65 縁
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冷静に考えれば羅濠教主が一時間、というのが何となく意外だ。てっきり一刻とかそういう表現をするのかと思っていた。
「あぁ。お義兄様にはその方がわかりがよろしいかと。一刻と言ってもお義兄様には馴染みのない単位でしょうし」
なぜわかった!? 読心術のような権能を持っていたのか!!?
「いえ。ですが仰りたいことなど大体は顔を見ていればわかります。武の至尊であるお義兄様を目指すもの、このくらい出来なくてどうしますか」
いや僕出来ないんですけど……
「事情はお義兄様が寝ていらっしゃる最中に聞きました。まったく、お義兄様の端女などという栄誉ある立場にいながらお義兄様の手を煩わせるとはなんとも情けない……」
「事情聞いてたのか。それなら話は早い」
知ってたなら早く言ってよ、と逆恨みと知りながらも若干の非難と恨みを込めた目で睨む。余計なことに時間を費やしたじゃないか。
「どうされました?」
理解されなかった。
「……肝心な所は鈍いやつめ」
ハァ、とため息をつけば。
「……涙目で睨んでくる小さいお義兄様を見ているとゾクゾクします」
ヤバい扉を開けかねない!!
「とりあえず外行くよ! 僕を連れてって!!」
慌てて目をふき、外に行こうとベッドから飛び降りる。こちとらドMじゃないのだ。いじめられるのは御免こうむる。「何考えてんだ!!」とティッシュボックスを投げつけようかと思ったが、今の羅濠教主なら「ご褒美ですありがとうございますお義兄様!!」くらい言いかねない。否、絶対に言う。断言してもいい。
「はい、では失礼して……」
そんな意思が通じたのか、恐る恐るといった呈で羅濠教主が黎斗を抱く。
「私も行きますよマスター」
「うぉお!!?」
いざ出発、と思った所で思わぬ声に驚く。そういえばエルの存在を忘れてた。
「エルどこにいたのさ」
「邪魔にならないように隅にいました。恵那さんと良い雰囲気になったと思ったら。……まぁ恵那さんも恵那さんですが。っていうか気づかれてなかったんですね私」
「……ごめん」
エルの気配に気づかないとは。気配察知能力も相当に下がっている。これだと先が思いやられる。
「はぁ。こんなんじゃ先が思いやられるよぅ……」
「ヘタレてないで早く恵那さんを探しに行きますよ」
「そだね」
そんな会話をしながら外へ出る。天気は快晴で、眩しい。雲一つない青空だ。視界を遮るものなど何もなく、羅濠教主が温度調節をしてくれているのか快適だ。下手したら眠ってしまいそうなくらいに。女の子を探しに行くのに、別の女の子に抱いてもらって、挙句に居眠りするのって人間としてどうなんだろう。その想いが黎斗の意思を水際で保
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