六話:ルドガーと骸殻
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中で一種の幻想ささへ感じさせた。
だが、斬り合っている本人達、特にルドガーは感動する暇などない。まるで、嵐のように荒々しく、それでいて林のように物腰柔らかなヴィクトルの剣撃は拮抗しているように見えても確実にルドガーの体力と精神力を削っていっていた。
「足元が留守だぞ」
「っ! その技はもう見切った」
相手が剣だけに集中している所に足払いを掛けて倒すという簡単ではあるが有効的な技をルドガーは一歩足を下げることで難なく躱す。以前の戦いでは何度も蹴り飛ばされて決定打を打たせるチャンスを与えていたが今回はその経験を踏まえて相手の好きなようにはさせなかった。
「ふっ、流石にあの時と同じ手は食らわないか」
ヴィクトルは避けられたことに僅かに驚くがすぐに余裕のある笑みを浮かべて再び剣を振るい始める。ルドガーもヴィクトルが何をしてこようとしているのかが分かり、同じように剣を振り始める。一切の無駄なく抵抗を極限まで減らしたうえで縦に横に、斜めに容赦なく相手を縦横無尽に斬りさかんとする、どちらもその手で殺した兄から受け継いだ奥義―――
「「双針乱舞!」」
全く同時に使われたその技は相手の剣とぶつかり合う事で雄叫びの様な衝突音を上げ光り輝く。そして、どちらも同時に止めの一撃を相手に叩きこむ。
「終わりだっ!」
「はあああっ!」
衝突により巨大な衝撃波が生み出され、辺りにあった細い木々の中にはへし折れる物も現れる。ぶつかり合っていた張本人たちは眩い閃光が迸ると共に後ろへと吹き飛ばされる。そして、両者が立っていた跡からはもうもうと土煙が舞い上がり姿を隠していた。しばらくして土煙が晴れると一人の人間が蹲り一人の人間が立っているのが見えた。立っている人間は―――ヴィクトルであった。
「どうした、もう終わりか?」
「まだ、出来るさ」
だが、ルドガーも目立った外傷は見受けられず、すぐに立ち上がり戦闘態勢を取る。その事に僅かながらの満足感を覚えながらヴィクトルも双剣を力強く握り直す。再び、戦闘が再開されると両者が理解し、動き出そうとした瞬間―――
「フェイト!」
「なのは!?」
離れて戦っていたアルフとユーノの叫び声が二人の耳に入った。二人は意識だけは相手から切らさないようにしながらも瞬時に自分の大切な者の方に目を向ける。すると、フェイトとなのはが四肢に水色の魔力による輪っか『バインド』によって拘束されているのが見えた。
二人は同時にこの事態を生み出したものを確認するために、この場に現れた新参者を見上げる。暗い夜空を背に、銀色に輝く月の光を受け、そこには黒衣を着た“少年”が宙に浮いていた。年齢としては子供と青年の中間地点に居るような者だった
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