第145話 電光石火
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た。彼女は洛陽に憧れている様子だった。都会に憧れる若い女の子の心境なのかもしれない。
「そなた。都に行ったことがないのか?」
「はい。私は長沙郡に来るまでは、ずっと揚州呉郡で生活していました」
正宗は孫権に都の話をさせられる羽目になった。正宗が少し表情に疲れが現れた頃、出来たて料理が運ばれ、付き次に円卓のテーブルに並べられていった。料理からは鼻腔をくすぐる美味な香りが部屋に漂う。正宗達は料理に視線を向け興味津々の様子だった。
配膳係である給仕達は仕事を終えると正宗に丁寧にお辞儀をして退出していった。それを皮切りに正宗達は料理の味に舌鼓をうった。一口二口料理を口にすると、彼らは表情を綻ばせた。
「新鮮な食材を使っているようだな。世辞抜きに上手い」
「真にございます」
泉が正宗の言葉に相槌を打った。残りの三人も笑みを浮かべ同じように同意した。甘寧だけはぎこちない笑みだった。無理に場の雰囲気に合わせようと頑張っているのが分かった。
「甘興覇、無理して愛想笑いをしなくてもいい」
「いいえ、そんなことは」
「お前が不機嫌と思っているわけでない。無愛想というか。人付き合いの苦手な人間は幾らでもいる。わざわざ無理して愛想笑いをされても私の肩が凝る。自然体でいい。その程度のことで機嫌を害すほど私は狭量でない」
正宗は甘寧に優しく言った。彼の言葉に甘寧は驚いていた。いつも無愛想な彼が自分を気遣うことを掛けたことが衝撃的だったのだろう。孫権も同じく驚いている様子だったが、表情に出たのは一瞬だった。
「申し訳ありません」
甘寧は恐縮するように頭を下げた。彼女が謝ると正宗は困った表情になった。その様子を孫権は微笑ましそうに見つめていた。孫権は正宗の素の姿は見た気がしたのだろう。正宗は普段の自分の態度に問題があったかもしれないと自省するように少しの間瞑目していた。
「甘興覇、料理が冷めてしまう。食事に集中しようではないか」
「はい」
孫権はばつが悪そうな正宗が料理を食べる姿を微笑んで見ていた。
正宗達は食事を取ることに集中したせいもあってか、あっという間に皿が空になっていた。
食事が終わる頃合いになると、扉を開けて給仕が部屋に入室してきた。そして、給仕は淹れたての茶を一人一人に丁寧に配膳していった。その茶を正宗達が飲んで人心地していると店主が姿を現してきた。
「清河王様、当店の料理いかがでございましたでしょうか?」
店主は恭しく拱手をして正宗に開口一番料理の評価を聞いてきた。
「美味であった」
正宗は笑みを浮かべ短く答えた。店主は正宗の表情から料理を気に入って貰えたと受け取ったのか満面の笑みを浮かべた。
「それは良うございました。これを気に南陽郡に来訪された折
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