第145話 電光石火
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と別れ美羽の元を訪ねるために、その場を後にしようとした。
「正宗様、本日のご予定は中止でよろしいでしょうか?」
泉は立ち去ろうとする正宗に言った。正宗は泉の方を振り向いた。
「いいや。孫仲謀との昼餉は予定通りに行う。一時間程遅れて行くと使いを出しておいてくれ」
「何を言っておいでなのです!? 未遂とはいえ暗殺されかけたのです。また襲撃されないとも限りません。ご自重ください」
「今回の暗殺の失敗は黒幕と実行犯共に痛いはず。難易度の高い投射をやってのける『弓の名手』を使ったのだからな。次は間を開けずに襲撃するはず。それが出来ねば暗殺の証拠を消すかもしれん。私の言いたいことは分かるな?」
正宗は真剣な視線を泉に向けた。彼は暗に「もし、実行犯に黄漢升がいれば口封じの危険がある」と言っているのだ。泉は悩ましい表情になった。
「事情はわかりますが、正宗様の御身が第一です。どうからお考え直しください。あまりに危険でございます」
泉は正宗に今日の予定を取りやめるよう諫言した。
「泉、『死地に活路を開く』という言葉もある」
「詭弁にございます」
「私は襲撃を受け暗殺されかけたのだ。ある意味窮地に立っていると言えなくもない。違うか?」
正宗の言葉に泉は窮した。
「亀のように籠ったところでいずれは荊州を去らなければならない。その時の後顧の憂を消しておく必要があるとは思わぬか?」
「分かりました。ですが護衛を付けさせていただきます。承知してくださいますね?」
泉の申し出に正宗は素直に頷いた。彼はここが泉との落としどころと思ったのだろう。二人は別れて、それぞれ美羽と冥琳の元を話をするために向かった。話を持ち込まれた二人は晴天の霹靂だった。特に美羽は実の兄と慕う正宗が矢で射殺されかけたことに動揺しきっていた。正宗は動揺した美羽を落ち着かせ、今後のことを説明した。美羽は劉表とことを構えることに苦悩するも条件付きで了承した。蔡瑁を誅殺した後、劉表との対立を最小限にするために彼女に助け舟を出して欲しいというものだった。
美羽の情報では劉表の弱みは彼女の長女である劉gで、劉表は蔡氏の手前大っぴらに口にはしないが、自分の後継者を劉gにしたいと考えているらしい。だが、劉gを支える後ろ盾となる人材がいないため劉表は苦悩しているとのことだった。もし、正宗が劉gの後援を引き受けることを内々にでも申し出ておけば劉表は正宗への遺恨を水に流す可能性があると言っていた。正宗はこれを聞き劉gと接触を試みるのだが、それはもう少し後の話となる。
正宗と泉は屋敷を出て大通りを護衛の兵を引き連れ馬で移動していた。正宗の服装は普段の庶民の服装と違い、身分の高い貴族が着る絹地の上等な服を身にまとっていた。腰には片手
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