第145話 電光石火
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遠縁ではあるが親類の間柄だ」
「蔡徳珪が親類のつてを使い黄漢升に暗殺を依頼したということでしょうか?」
「黄漢升は王殺しを進んでやるほど思慮が足りないとは思えないがな」
正宗は泉の答えを否定した。
「では黄漢升は蔡徳珪に頼みを聞かねばならない事情があるということでしょうか?」
泉の問いに正宗は頷いた。
「黄漢升には一人娘がいる。それを質に取られているのやもしれん。あくまで推測だがな」
「そんな真似をすれば蔡一族と黄一族に亀裂を入れることになるのでありませんか?」
「黄承彦が既知のことであっても確たる証拠がないなら動ぐに動けんだろう。もしくは知らないかだ。前回と此度の襲撃を見てみよ。蔡徳珪は確たる証拠は残さない。前回は私が鎌をかけ上手く馬脚を露わにさせることができただけだ。黄承彦も漢中の名士であり蔡徳珪の親族とはいえ、荊州牧という後ろ盾のいる蔡徳珪に対して、私と同じことはできまい」
泉は正宗の言葉に拳を握りしめた。蔡徳珪の卑劣さに今更ながら義憤に駆られているようだった。
「泉に頼みたいことがある。暗殺の手際から暗殺者は宛城内に潜伏している可能性が高い。まず、早朝私が城門を出た時刻の前後に城門を通った者を一人残らず調べあげよ。その際、城門を出た者が黄漢升だったかも確認するのだ。渚に仔細を話て協力を得よ」
「畏まりました。もし、城門を出た者達の中に黄漢升がいた場合はどのように対処いたしましょうか?」
「黄漢升とその娘の居場所を特定しろ。この任は七乃に依頼し、人選は七乃の暗兵だけで構成するように念押ししておけ」
「七乃殿にございますか?」
「そうだ。劉景升の存在を気負うことなく動ける人材に任す必要がある。その点で七乃は適役だ」
泉は明らかに剣呑な表情になった。
「七乃殿が大人しく私の頼みを聞いてくれるでしょうか?」
七乃が変人と知っている泉は正宗の命に難色を示した。正宗は泉を笑みを浮かべた。
「蛋の作り方を教えてやると言えば快諾するはずだ」
「蛋でございますか? ああ、正宗様が作られる甘い菓子ですね。美味ですが七乃殿が納得するとは」
泉は思い出すように喜色な笑みを浮かべていたが、直ぐに思案顔に顔に変わった。泉には腹黒の七乃が菓子如きで虎の子を貸すとは思えないだろう。
「いいや貸す。蛋は美羽の好物なのだ。それでも駄目と言うなら美羽の命に関わると言えばいい。七乃は美羽の身が第一。ある意味は誰よりも信用できる美羽の忠臣だからな」
正宗は七乃のことを意味有りげに評した。
「畏まりました。では七乃殿に協力をお願いしてみます」
「頼んだぞ。調査の手配は今直ぐに動いてくれ」
「私は美羽に仔細を説明しに行ってくる」
正宗は泉
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