第145話 電光石火
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れたことが嬉しかったのかやる気に満ちた表情だった。
「冥琳に申しておけ。洛陽市中に流言を流し、それが十分流布した後に劉景升を弾劾する上奏文を奏上しろ。洛陽で動く際、賈文和の動きには注意せよ」
正宗の考えた流言の内容は、
――清河王が蔡徳珪に二度も襲撃された。蔡徳珪の後ろで糸を引くのは劉荊州牧らしい。
「流言には尾ひれが付いていく」
正宗は狡猾な笑みを浮かべていた。市井に広まった噂は朝廷にまで自然と届く。正宗は朝廷工作を行う前の地ならしをした後、満を持して劉表の弾劾を行うつもりのようだ。
「劉景升は一笑に伏し否定するのではございませんか?」
泉は正宗の考えに疑問を抱いているようだ。
「事実であるかないかは重要ではない。劉景升の統治下の荊州にて王が暗殺されかけた事実が重要なのだ。この事実を百官居並ぶ朝議の席上で暗殺に使用された毒矢を添えて王暗殺未遂を強調すればいいのだ。後は百官が真偽を正すためにきっと劉景升を召還する。召還状を拒否すれば劉景升は終わる。劉景升は望む望まない関わらず上洛せざるおえない」
「召喚をしない可能性もございます。朝廷には董仲穎一派がございます。上洛を予定している正宗様の暗殺は喜ばしいことと思うのでは? 荊州に正宗様が釘付けされれるのは彼らの望むところかと」
泉は神妙な表情で自論を述べた。
「もし、そうなれば王司徒が黙っていまい。王司徒は私の上洛を期待している。董仲穎一派が邪魔すれば邪魔するほど対立が激化し、劉景升を召還するしか事態の収拾がつかなくなるだろう」
正宗の説明に泉は納得したのか何かを考える表情に変わった。
泉は考えがまとまったのか正宗を真っ直ぐに見た。
「劉景升の留守を狙い蔡徳珪を殺すということでしょうか?」
泉は周囲を気にするように正宗に言った。対して正宗は肯定するように頷いた。
「奏上の役目は冥琳に任せる。冥琳は官職もあり、私の名代として赴けば直に皇帝陛下に奏上できる。清河国に居られるお爺様と袁叔父上の協力も得よう。流言の件は揚羽一任した方がいいかもしれんな。冥琳の元を訪ね仔細を話し冀州へ早馬を出せ。それと並行して調べておきたいことがある。実は今回の暗殺の実行犯に心当たりがあるのだ」
「お心当たりの人物とは?」
泉は神妙な雰囲気で小さい声で正宗に尋ねた。
「黄漢升だ」
「黄漢升にございますか? どういう人物でしょうか?」
泉は荊州の事情に詳しくないためか黄忠のことを知らないようだった。
「弓の使い手なら大勢いるだろうが名手となれば話は別だ。そして、黄漢升は荊州では名の知れた弓の名手。荊州で弓の名手は黄漢升以外にいない。黄漢升は劉景升の配下で、黄承彦を介して蔡徳珪とは
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