第145話 電光石火
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見つめた。彼が手に掛けた蔡瑁の妹のことを思い出したのかもしれない。彼は蔡瑁の妹・蔡勲の毅然とした態度に惚れ込み士官を条件に助命することを約束した。彼の提案は彼女に拒否された。その結果、彼は彼女を賊として斬らざる終えなかった。彼の表情からは未だに彼女を斬ったことを惜しんでいることが伺えた。
「多くの戦場を巡り多くの人死を目にしてきたが、殺し合いは憎しみの応酬しか産まない。そうは分かっていても人は殺しあう。自らの守るべきもののためにな」
「正宗様が気負いなさる必要はございません。振りかかる火の粉は払わねばなりません」
泉は正宗を擁護するように真剣な表情で言った。
「私も子供ではない。殺らねば殺られるなら相手を迷わず殺す。つい感傷的になっただけだ。泉、心配するな」
正宗は笑みを浮かべて泉に言った。泉の表情はまだ晴れていなかった。
「蔡徳珪をいかに処断されますか?」
泉は確定事項のように正宗に言った。正宗は為政者として成長してきたが時々甘さがでる時がある。だから泉は敢えて正宗の背中を押すように進言したのだろう。
泉の言葉に正宗は瞑目し沈黙した。
正宗は活目すると泉を見た。
「蔡徳珪は一線を越えた。奴には死んでもらう」
正宗の表情はいつもの美羽に見せる優しい兄の表情と違い、政のために命を切り捨てる冷徹な為政者のそれに変わった。泉は神妙な表情で正宗が続きを話し始めるのを待つ。
「劉景升に蔡徳珪を切り捨てさせる」
「劉景升とことを構えるのでございますか?」
泉は正宗の話に全く動じていなかった。蔡瑁と事を構えれば自動的に劉表と事を構えることになる。敢えて泉が正宗に問うたのは美羽が劉表と争うことは避けたがっていたからだろう。彼女は美羽の意向を無視して劉表と争う覚悟が正宗にあるか問うたのだ。
「このままでは美羽の身が危険になる。今回のような襲撃を美羽が撃退できるとは到底思えない。私が荊州を去る前に蔡瑁を殺す」
正宗は最後の辺りの言葉を泉にしか聞こえないような低い声音で言った。彼は蔡瑁を殺すことを覚悟した。泉も正宗の覚悟を察したようだった。
「私は正宗様の考えに賛同いたします。蔡瑁は斬らねばなりません。冀州より兵を呼び寄せてはいかがでしょうか? 騎馬のみなら強行軍をやれば半月後には豫州までこれましょう。美羽様が南陽郡に下向されたおり同卒された榮奈様であれば地の利があり荊州入りも難なく成せるかと。また、榮奈殿の軍師として雛里様にも道々していただけば心強いかと思います」
泉は正宗に献策した。正宗は考え込む。
「泉、お前の献策を採用する。先ほどの献策を冥琳に持って行き調整せよ。美羽には私から説明する」
「畏まりました!」
泉は正宗の自らの献策を採用さ
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