第145話 電光石火
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。もし、彼が体を気で硬質化していない無防備な状態を狙われれば、彼は間違いなく死んでいた。正宗は深刻そうな表情を浮かべていた。
「泉、襲撃は難なく撃退できたが暗殺者に逃げられてしまった」
「暗殺者の人相や背格好は覚えておいででございますか?」
「見ていない」
正宗の言葉に泉は訝しんだ。
「どういうことでございますか?」
「暗殺者達は直接の襲撃を避け、遠方から弓を使用して正確無比の投射をしてきた。暗殺者の残した痕跡から最低でも約一市里(五百メートル)の距離はあった。それも視界の悪い森のかなり奥からな」
「そのような芸当ができる者がいるのでしょうか?」
泉は正宗の話に驚きを隠せずにいた。弓の名手を暗殺者として送り込む。これは相手が正宗の強さを知り、確実に正宗を暗殺するために用意周到に準備していたといえる。これで正宗を襲撃した暗殺者達の黒幕は蔡瑁である可能性が更に高くなっていた。そのためか泉の表情は更に険しくなった。
「暗殺者が弓の名手なのは間違いない。その上、襲撃に使用された鏃には毒のような液体が塗付していた。毒であるかは調べねばわからないが、わざわざ距離を取り殺気を気取られないようにする念の入れようだ。毒で間違いないであろう」
「真にございますか!?」
泉は新たな正宗の証言に更に驚く。
「弓の名手と毒を塗った鏃。暗殺者達を放った者は私を本気で亡き者にする気だな。泉、矢は全て回収して持ち帰っている。後で冥琳に渡して調べてもらってくれ」
「畏まりました」
泉は正宗への襲撃に動揺気味であったが、彼の命令があると平静を取り戻し返事した。
正宗は着替えを終えると衝立から姿を表した。彼は水浴びし服を着替えたことから話の内容とは対象的にすっきりした表情をしていた。彼は内心暗殺のことで心配であろうが、彼も一廉の戦場を渡り歩いた武人。部下に情けない表情を見せないように気を張っているのだろう。
「正宗様、暗殺者は蔡徳珪の手の者では?」
泉の表情は確信している表情をしていた。正宗も泉と同意なのか肯定するように軽く頷いた。
「確たる証拠はないが可能性は高いな」
蔡瑁には美羽の暗殺未遂の前科がある。暗殺の襲撃に際しての用意周到な準備。そして毒矢。二人の中では暗殺の黒幕は蔡瑁で固まっているに違いない。たが、確証がないため正宗は明言を避けた。
「黒幕が蔡徳珪であれば、今回の襲撃は奴の縁者を私が手に掛けた報復といったところか」
「それは逆恨みというもの。正宗様が恨まれる道理はないはず。はじめに仕掛けたのは蔡徳珪でございませんか」
「蔡徳珪にはそうでないのであろう。仮に非が自分にあったとしても肉親を殺されれば、相手を恨むが人の性というものだ」
正宗は憂いのある表情で虚空を
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