一節・少女と男
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物悲しげの表情へと変えた。
「いつ終わりが来るあなんざ、オレちゃんにゃ解らないわな。けども『どうせみんな死ぬ、何処でどう死ぬか早いか遅いかの違い』ってんなら……せめて百層までぶち抜いて、生還した先で好きんなった奴とくっ付いて、ガキに看取られて死のうや。な?」
「……」
何時に無く真剣な彼の言葉に、少女は何をするでも無くただ聞いていた。
そして考える―――百層まで行けるかどうかは分からないし、そもそもこの層を踏破出来るのかすら、依然として分からない。
それでも、燃え尽きるその時を、限界の来るその時を、より先へと伸ばせるのなら……自分の “行ける場所” がまだ先だと言うのなら、少女にとっては進むほかない。
……もし此処までの事を想定して、先の言葉をつづけていたのならば、彼はある意味で喰えない男と言えた。
「そんで、参加するんかい?」
「……ええ、行ける所まで行くのが、私の目的だから。あなたは?」
「オレちゃんか? オレちゃんも“今回は”参加しようと思ってるのよ。ま、次はレベル足りるか分からんから見送らせてもらうわな」
「……そう」
それだけ言うと立ち上がり、少女は立ち去ろうとして……ふとある事を思い出す。
少女が此処にいると言う事は、即ち男は何かしらの手段を講じて、彼女をフィールドの安全地帯まで運んだと言う事。
そのロジックがいまだ不明のままなのだ。
数歩進んだ位置から動かず、少女は首だけで振り向いた。
「あなた、そう言えば私をどうやって運んだの?」
「ああ、アレかい。途中までは引きずってたがな、黒いにーちゃんが “シュラフに包んで持ってけばいい” とか言ってたやな」
「……結局は?」
「引きずった」
言うが早いかレイピアが閃き、しかし瞬時に抜刀―――否、抜槍されたスピアーでいなされ、感情任せの攻撃は不発に終わる。
男はクルクルと得物を回し、律儀且つ丁寧に槍を背へ戻した。
「寝たおかげかね? えらく元気になったじゃないのよ」
「……お陰さまで」
戦闘事に関しても上手かと少女は苦々しい表情を作り、今度こそ背を向けて去っていった。
木の根から腰を上げずにその背を見ながら、またもブルーベリー色のパイプを吹かし、濃く青い煙を吐きだす。
「さて、オレちゃんもやるべき事やりますかね……まずは、ゲームからだわな。『私用』はまださきだ」
そして、大きく溜息を吐いた。
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