第1話「雨ニモ負ケズ」
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上げたリモコンを床に叩きつけ、何度も踏みつけてガタガタに壊す。
「兄者だっていつもお構いなしにテレビBGM代わりにしてるだろ」
「兄者?誰それ?お前のお兄さんならもうとっくに殉職しただろうが。兄貴の事はもう忘れて一人立ちしろって言ってんだろ。俺の事は社長と呼べテキサス!」
「誰が社長?テキサスって何?……それより銀さんお客さんほっといていいんですか」
横から見ていた新八に指摘され、銀時は慌ててキザな表情に戻り、反対側のソファーに座る女性に振り返る。
柔らかげな物腰に優しげな微笑を浮かべているが、どことなく疲れた雰囲気を身にまとう女性は、どこかで見たことある顔だった。
それは新八も神楽も――というより江戸の住人なら誰もが知っているお天気アナウンサー・結野クリステルその人である。銀時が双葉に邪魔され外に飛び出していったあと偶然街で出会い、そのまま万事屋に連れて来たのだ。
いきなりの有名人の登場に本来ならはしゃぐところだろう。だが先ほどの批判コメントが流れた後では、どうにも空気が重い。
この気まずい雰囲気を何とか立て直そうと、銀時は紳士口調で話し始めた。
「結野さん、人のドス汚い所しか見れない批評家のことなんて気にしてはいけません」
「いえ、いいんです。本当のことですから構わないで下さい」
陰が差してる表情とは裏腹に明るい声で応える結野アナ。
その落差に銀時の胸が痛む。
「そんな顔をした女性を放っておけません。あなたがそんな風になったのはお天気のせいですよね。ひとまず、この私にまかせてみてくれませんか」
「『まかせる』ってどーするつもりアルか。天気予報当てるために天気でも変えてやるいうアルか」
ソファーに座って酢昆布をくわえた神楽が言う。
どんな無茶な仕事でもこなすのが『万事屋』。
だが天候を操るなど神か、あるいはそれに匹敵する力を持った者にしかできない。もちろん、万事屋にそんな能力者はいない。
「確かに私たちは天気を変えるなんてことは流石にできません。ですが、たった一つできることがあります。それは結野アナ、あなたのその曇り顔を晴らすことです」
さりげなく言葉もポーズもバッチリ決める銀時。
しかし、結野アナは頷かなかった
「そのお気持ちだけでも十分です。こんなにボロボロになっても応援してくれる方がいてくれた。それがわかっただけで私は充分です」
「ですが……」
「もう諦めはついてるんです。天気の読めないお天気アナなんて必要ないですもの」
何か言葉を返そうと銀時は口を開いたが、否定するように結野アナの声が被さった。
部屋にしばらく沈黙が流れた――といっても、実際は秒にも満たない時間だ。しかし、毎朝テレビで見るのとは正反対の――落ちこんでる姿が時の流れをひどく遅く感じさせる。
このままでは
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