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第五章

「それなのよ」
「そんな猫がいるんだ」
「いるのよ。だからそれなのよ」
 こう言うのである。
「これは」
「けれどさ。猫ならね」
 しかしここでまた牧男は言うのだった。
「何で草を食べてるの?」
「えっ!?」
 江美は今の牧男の言葉を聞いて驚きの声をあげた。
「草って?」
「猫ってお魚とか鼠を食べるじゃない」
 誰もが知っている猫の食べ物である。
「けれどさ。ほら、あれ」
「あれ?」
 牧男が指差した方を見る。見ればそこにもその猫に似た生き物達がいる。彼等はそこに集まってそのうえで何とよもぎやおおばこを食べているのである。
「ああしてよもぎとかおおばことか食べる?」
「食べないわよ」
 すぐに答える江美であった。
「そんなの。よもぎとかおおばこなんて」
「じゃあ猫じゃないよね」
 牧男はここぞとばかりに満面に笑みを浮かべて述べたのだった。
「これって絶対」
「そうね」
 江美は残念そうに牧男に答えた。
「そうなるわ。これはね」
「じゃあ僕の勝ちだね」
 牧男はここぞとばかりににこにことして江美に声をかけてきた。そうして。
「じゃあ。約束だけれど」
「わかってるわよ」
 笑みは憮然として牧男にまた答えた。
「約束よね」
「そうよ。それだけれどね」
「それで何をすればいいの?」
 かなり憮然とした顔で牧男に問う。
「私。何をすればいいのよ」
「これからも一緒に帰ろう」
 牧男の言ったことは意外なことであった。
「一緒にね」
「一緒にって?」
「学校の帰りもこうした塾とかの帰りも」
 どちらもなのだった。
「後学校行く時もいつも一緒にね」
「一緒になの」
 江美はそれを聞いてまずは目をしばたかせるのだった。
「何よ、それって」
「嫌なの?」
「嫌じゃないけれど」
 それはそうではないと言いはする江美だった。いささか憮然とした声ではあったが。
「それはね。違うわ」
「そう、よかった」
「よかったって何がよ」
 また牧男の言葉に対して問い返した。
「よかったっていうのは」
「あっ、何でもないよ」
 しかしその言葉には答えない牧男だった。
「それはね」
「あまりそうは思えないけれど」
 そしてそれを素直には信じない江美だった。
「そもそも何で私と行き帰りいつも一緒にいたいのよ」
「だから何でもないって」
「それが嘘でしょ」
 あくまでこう問い詰めていくのだった。
「それ自体が」
「嘘じゃないって」
「嘘よ。素直に言ったら?」
 牧男を問い詰める言葉に棘がこもってきた。
「どうして私と一緒に帰りたいのよ。それはどうしてなのよ」
「まあちょっとね」
 やはり言おうとしない牧男だった。照れ臭そうに笑いながら。
「ちょっと。
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