After9 甲殻奇兵 A
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ずるり。ずるり。
イザナミインベスが前へと進み始める。通った跡に粘液を残しながら。
鍬木が警戒してか、ペコから足をどかせて下がった。
「ゲホッ、ゲホッ!」
「ペコ、大丈夫!?」
チャッキーはペコに駆け寄った。
チャッキーはペコの腕を肩に回させ、二人してひょこひょことイザナミインベスの背後に回った。このイザナミインベスは、巨体だ。しばらくは盾になってくれるはずだ。
イザナミインベスの体中の隙間から、鍬木がクワガタインベスとなって曲刀を揮うのが見えた。
あんな斬撃をペコが食らっていたらと想像すると、体感温度が下がった。
「ごめん。俺、また役立たずだった……っ」
「いいんだよ。そんなの。無事だっただけで儲け物だって」
チャッキーはとにかく急いでスマートホンのボタンを連打し、耳に当てた。
もどかしいほどのコール音の連続を経て、ようやく電話が繋がった。
「ミッチ! お願い、来て。オーバーマインドが出たの。あたしやペコじゃ相手にならない。助けて!」
《――君は、光実のチームメイトの》
よく似た声だが、違う。電話の向こうで応えたのは、光実ではなく貴虎の声だった。
面食らい、はたと思い当たった。
電話帳はアイウエオ順にアドレスが表示される。きっと自分は同じ「呉島」姓で、五十音順では上にある貴虎に過って電話してしまったのだ。
《オーバーマインドが現れたんだな?》
「は、はい……でも、貴虎さん、ベルトが」
貴虎も元アーマードライダーのザックや凰蓮と同じくドライバーを持っていない。アーマードライダーに変身して戦うことはできない。
《大丈夫だ。対策は用意してある。君たちはどこかに隠れているんだ。すぐに向かう》
電話が切れた。
チャッキーはインベスゲームをほとんどしたことがない。裕也がいた頃は裕也か舞、裕也が失踪してからはもっぱらライダーバトルだったからだ。そのためチャッキー決してインベスの制御に秀でてはいない。
それでも開錠したのが彼女である以上、このバケモノは彼女にしか制御できない。
(お願いよ。少しでも長く保って!)
チャッキーはロックシードを両手で、祈りの形に組んで握り締めた。
――だが、祈れば加護が与えられるほど、現実は甘くない。
きぃぃぃぃぃぃぃ!
がしゃん。
イザナミインベスの骨の腕の片方が地面に落ちた。
ちらりと見えた。クワガタインベスは曲刀2本を連結させ、クワガタの角の形にしていた。
――何かのバラエティ番組の検証で観たことがある。クワガタの角で挟まれると、対象物によっては繋ぎ目から真っ二つに切断されることがあると。
では、そのクワガタがインベスで
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