五話:審判と運命
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そ、フェイトには自分の娘のような目にはあって欲しくないのだ。親の為に必死に頑張ったにも関わらずにその親から拒絶されるなど……耐えられないだろうから。それを行った張本人であろうとも見過ごすという選択はしたくなかった。ヴィクトルは俯くフェイトを優しく抱きしめ、慌てるフェイトに穏やかな声で話しかける。
「私とアルフの前だけでいい。甘えてくれ。素のままのフェイトでいてくれ。それが私の願いだ」
「……ヴィクトルさんと…アルフの前で」
「そうだ、フェイト。私の願いを叶えてはくれないか?」
その言葉にしばらく悩んでいたフェイトであるが、やがて、コクリと小さく頷いて甘えるようにヴィクトルの胸にその小さな顔を埋める。彼はあやす様にフェイトの背中を優しくポンポンと叩く。アルフはその様子をニヤニヤとしながら見つめていたが、ヴィクトルに手招きされてギョッとしながらも近づいていき促されてフェイトの頭を撫でる。温かな感触にフェイトはヴィクトルの胸の中で目を猫のように細める。
「フェイトも甘えん坊だねえ」
「……ヴィクトルさんとアルフだから甘えてるの」
少し拗ねたような声にアルフは苦笑しながらもフェイトが子供らしくなってくれてよかったと思う。以前までの余りにも自分の使命に殉ずる姿は長年見て来たアルフからしても異常だと思っていたし、フェイトにそうさせるプレシアに対して怒りを抱く大きな原因にもなっていた。
だが、そんなフェイトをヴィクトルが変えてみせた。自分にも変えられなかったフェイトを変えてみせたのに若干の嫉妬の念も抱くがそれ以上に感謝の念が大きい。目の前でまるで、父親が娘を抱きしめる様に慈しみを持ってフェイトを甘やかしているヴィクトルに対してアルフはこの男がフェイトの親だったらよかったのにと思わずにはいられなかった。
「温泉か……偶にはゆっくりするのもいいだろう」
温泉旅館の玄関口で旅館を眺めながらポツリと呟くヴィクトル。フェイトに甘えろと言った後日、ヴィクトル達はこの旅館周辺にジュエルシードがあると目星をつけて、折角近くに温泉旅館があるのだから泊まって英気を養おうという考えに至ったのである。様々な事を考えながら三人は受付を手早くすまして予約しておいた部屋に入り一息つく。
見た目が怪しいヴィクトルに、明らかに日本人には見えないフェイトとアルフの一行は人の目を引いてしまうのだ。せめて自分が仮面を取れればまだ怪しまれないのだが、とヴィクトルが思うものの外したら、外したらで、今度は時歪の因子化の痕が見えてしまうので余計に目を引いてしまう。
「二人はお湯にでも浸かってきなさい」
「アンタはどうするんだい?」
「私はしばらく適当にくつろがせて貰うよ。温
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