番外『有り得ぬ世界』
交節・月光が求むのは鉄色の刃
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うに、彼の得物は鉄一本から削り出したが如く、一色人繋がりの余りに簡素過ぎる刃物だった。
青緑色にぬらリと光る短剣は柄と刃の境が少々分かり辛く、持つ方も気を付けなければ手にダメージをうっかり負ってしまいそうだ。
始まりの街に売っている短剣ですらそこまでデザインに手を抜いてはおらず、今まで見た事の無い剣にジンの警戒心は募るばかり。
それでもやるべき事を口にした手前引く訳にはいかず、デュエルを申請する。相手の男は直ぐに承諾し、彼の名前が『GATO』―――ガト、ガトウ、ガトーの何れかである事がまず分かった。
レベルと同じく、名前の欄まではバグ状態に陥っている訳ではないようだ。
「……お前、名前の読みは?」
「あぁ、アレだ……“ガトウ” だ」
そう判断し、そして名前を聞くと同時、デュエルスタートまでのカウントダウンが始まる。
デュエルは戦いはじめる前から勝負は既に始まっており、構えから体勢からどのような技が来るのかを読んで、対処するか自ら動くかを決めるのだ。
カウントダウン中何も考えず、ただ剣を握って立っているだけなのは三流。攻略組と打ち合うのならば愚行と言える。
……言えるのだが、ガトウはまるで力を入れずに短剣を握り、ブラブラ腕を揺らしてジンを見ているだけ。
いっそ清々しいぐらい、構えもクソも無い。
対するジンは中段受身気味に刀を構え、相手の読みを外すべく少しばかりすり足で動いている。
(……舐めてるのか?)
脳裏に疑念が強く浮かぶジンだが、相手の思惑を考える間もなくカウントは五秒を切る。
四―――三―――ニ―――一―――零を指す前にジンは地を蹴り爆進。二、三度ステップを踏み視線を定まらせず、刀の位置を腰溜めへと変えて刀スキル『辻風』を発動させる。
その瞬間…………何と言ったらいいのだろうか、ガトウを見たジンの背筋に “ゾクリ” とした背向けが走る。
それがン何のか分からぬままモンスターと相対した時を超える、恐るべき速度で刀がガトウへ迫り―――直後、肘に衝撃が走ったかと思うと、ガッチリと止められた。
「はあっ!?」
「……」
そう “ガッチリ” と。
ジンはガトウに、肘近くの下腕を左手で『掴まれ』て、結果ソードスキルを不発と終わらせられたのだ。
見ると、ガトウは今までとは別人かの様に、細め気味だった目を開いて白黒逆転した目を晒し、此方を睨んでいるかのようにしっかり見据えている。
「シッ!」
「!」
挙動と変わり様の二度の驚愕から、間髪置かずに顔面へ短剣を右から一閃。
何とか対処しようと刀を手首で持ちあげると、ソコへ柄の打ち降ろしがきて強引に打ち下げられ
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