番外『有り得ぬ世界』
交節・月光が求むのは鉄色の刃
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であるマジックアイテムの類だろう。
少しばかり右手と比べて長いのは、生まれつきであろうか。
そこでジンは、卑怯だなとは若干思いながらも、自身のスキル《千里眼》を発動させた。
発動とはいっても、プレイヤー当人が望んでから本当に発動するまでは一分間待つ必要があり、そして一日一回という制約こそあれども、敵の位置を知りステータスさえ見抜けるこのスキルは、充分過ぎるぐらいリスクに見合う価値のあるものだ。
一分たっても未だ動きを見せない男に目を向け情報を得て―――ジンは二つの意味で絶句した。
「ス、スキルが……《短剣》、《曲刀》、《細剣》、《両手剣》、《両手槍》、《投剣》、《体術》………………それ “だけ” だとっ!?」
一つ目の絶句は驚愕、そして呆れの絶句。
通常ソロで活動するプレイヤーは、デスゲームだという事もあり策敵に隠蔽、場合によっては聞き耳スキルを会得する者が殆ど。
……というか全員であり、それは例え中層クラスのプレイヤーでも余り変わらず、意味の重複する武器スキルで貴重なスロットを埋めたりはしない。
なのに男は使い方がまるで違う五つの武器カテゴリスキルをスロットに入れ、しかも他の目ぼしいスキルはスローイングダガー等を投擲し攻撃できる《投剣》スキルと、拳や脚などで武器が無くとも攻撃を行える《体術》スキルの、補助は補助でも “戦闘時における” 補助スキルのみ。
戦闘外、探索中に自身の身を守るためのスキルが、全くと言っていい程なかったのだ。
攻略組クラスとなればレベル自体もそれなりのモノだろうし、まだスキルスロットは三つ以上空いているであろうに、そこすらも埋めていない。
件の男は一体何を考えているのだろうか。
だがしかし、それを超える二つ目の絶句がジンを襲った。
「気を取り直して……レベルは、79か、同じぐらいって訳だな。それでステータス――――は……っ!?」
レベルは確かに表示されている。だからそれに見合った数値のステータスが表示される筈なのだ。
筈なのに、
(バグってる……いや、“何も分からない” ……!? ど、どういう事だ……!?)
いっそ清々しい程何も見えない。
この時点で目の前のプレイヤーが、『ただ強いだけのプレイヤー』ではない事を告げていた。
警戒心が先に立ち、刀の柄尻に手を添えた……瞬間、男がゆっくり顔を上げた。
「……ん、くぉあ……」
「……はっ?」
今のは聞き間違えだろうか? ジンはそう思わざるを得なかった。そりゃそうだろう、こんなフィールドのど真ん中で睡眠を取る等あり得る筈が―――
「……スゥー……フゴッ」
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