番外『有り得ぬ世界』
交節・月光が求むのは鉄色の刃
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』」
この戦闘で初めて喋ったガトウの左手は、ジンの顔面をしっかりつかんでいた。
強引に猛スピードでのチャージを止められたジンの脚は、勢い余って前へと延びて重力に従い戻って来る。
振り子運動を真似た、独自の片手投げで倒れかかりながら草地へ投げつけられ、刀を左足で押さえつけられた。
抗いようもないその体勢、容赦なく顔面に青緑に薄らと光る刃が、直前でより輝きを増して迫る。
そして、勝敗は決した。
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winer:GATO
と、そう書かれたシステムメッセージが消えてから、今までずっと倒れ込んでいた仁は上半身を上げ、また座り込んでいるガトウへ向けた。
「おまえ、何者だよ……」
「……アレだアレ……同じ、プレイヤーだ」
「……そうかよ」
それ以降会話も無く、ただただお互いに黙り込み、森林には沈黙が走る。
自身等に危害を加えかねないプレイヤーなのか、この手合わせでは心情の一片たりとも窺えず、見抜く事も叶わなかった。
願うしかないのだろうか、それとも此処で粘るか。
ジンが思考を幾つも巡らせ、眼を鋭くして完全に起き上がる。
「ガトウ、悪いがハッキリ―――」
「……フガッ…………スピィ……」
「待て待て待て! また寝てんのかお前!? そりゃないだろ!?」
大声を出そうともやはり起きない。
後に何とか聞き出してみれば、前線で寝てみたかっただけだの、個人的に攻略に興味は無いだの、要領は一応得ている答えが、しかし納得のいかない返答が得られただけ。
こうして、月光の剣士と謎の短剣使い―――否、色黒な寝ぼすけとの一戦は、何とも微妙な形で幕を下ろすのであった。
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