番外『有り得ぬ世界』
交節・月光が求むのは鉄色の刃
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力の三割強を削り取っている分、焦る必要など何処にもない。
「グルルルルル……オオオオオオン!!」
降りかかる左爪を刀を斜め倒しにして下へ流し、向きを変え右爪が迫る前に横腹へ走り寄る。
ソードスキル無しで居合いの如く横薙ぎに。
頭上に構えなおして左から斬り降ろし左方へステップ、再び振り上げ刀を打ち降ろす。
喰らいつこうと体勢を変える狼に合わせて、ジンも胴抜きの要領で下にあった刃の切っ先を上方へと振り上げる。
「グオオオッ! ギョオオオオオオ!!」
「シッ!」
狼の回転攻撃は刀を片手に保持し、二m程を飛び退る事で範囲外へ逃れる。
攻撃後、すぐさまジンは肉薄。
突進突きから振り上げられる刀、その刀身を次に包むは赤い閃光―――振り降ろし振り上げ、一拍置く構えなおしから腰を入れての突き。
刀スキル『緋扇』の三連撃は、相手の残りHPをニ割弱まで削り取る。
「ルルルルルルオオオオッ!!」
右爪を擡げて左爪を掲げ、牙を剥き出して暴れ出し、狼型モンスターの悪足掻きがはじまった。
が、所詮一般モンスター。その挙動は情報も地には単なる隙見せの愚行に他ならない。
右爪は縦一閃で抑え付け次にステップし、《蒼天》を再び斜に構えて左爪を回避。そのまま右へ転がりこんで牙を避け、ジンはトドメのソードスキルプレモーションを取る。
青紫に瞬く切っ先が二回めり込み一歩後退、引き抜く形で面打ちの格好へ意向。右寄りに振りきった刃を今度は『辻風』の如く横向きに薙いだ。
四連撃刀スキル『流藤』で狼型モンスターのHPは全損、それは間違い無くジンの勝利を示している。
悲鳴も上げられず四散して、辺りには経験値とアイテム取得の音を知らせるサウンド以外、静寂に包まれている。
……もっというなら、ジン意外にそれは聞こえない為、傍からは何も響いてこなかったりもする。
そこからまた歩き出すが、彼の歩みは不意に止まる。
「居た! アイツか」
見つけたのだ、お目当てのプレイヤーを。
髪の毛はかなり短く逆立っており、緑色に黒を混ぜた様な“鉄色”で所々暗い銀色のメッシュが入っている。
肌はジンと違って浅黒く、現実でも鍛えていたか筋肉もそれなりに付いていて、彼には相手の背の高さも相まって、エギルという斧使い兼商人プレイヤーを思い起こさせた。
もっとも向こうは少なくとも件の男よりは年上で、スキンヘッドという違いがあるが。
彼は最低限の鎧を付けた左袖の無い装備のまま胡坐意を書いて座りこみ、腕を組んで下を向き、何かをじっと忍耐強くまっているように見受けられる。
左腕にがっちりと巻いた包帯が気になるが、恐らく特殊効果付き
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