番外『有り得ぬ世界』
交節・月光が求むのは鉄色の刃
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某日某時刻、とある噂がアインクラッド前線にて流れた。
……戦った攻略組のプレイヤー曰く “恐ろしく強い、鉄色の髪と暗銀のメッシュをもった、短剣使いの男性プレイヤーが居る” と。
それは、今まで何故攻略に乗り出さなかったのか、何故ギルドを率いていないのか、疑問に思う程だったという。
半信半疑な者が多数なれど、信じる者が居ない訳でも無い。
「恐ろしく強い、か。そりゃ相対してみる価値充分てもんだな」
黒髪のツンツンに尖った、整えてはいないだろうヘアースタイル。
細くキリッとした、鋭い瞳。
インドア派だったのかと思わせる、一般と比べて白い肌。
血盟騎士団の色違いの様な、蒼色のラインと銀色メインのコート。
そんな容姿を持った齢十五歳ほどの人物が、噂の男をよく見かけるという層のフィールド、森林地帯に踏み込んでいる。
彼も、信じている方のプレイヤーなのだろうと窺える。
「しかし、寝てばっかりなんて……有り得ないよな。フィールドのど真ん中でなんて、そりゃ信じられねえ」
彼の名はジン。
刀カテゴリに属する武器を扱い、スキルを使いこなすプレイヤーだが、彼の真価は刀そのものよりもまた別にある。
今しがた彼の言ったように、このアインクラッド……SAOと呼ばれるゲームの舞台である浮遊城は、そこで死んでしまえば現実でも死んでしまうデスゲームの場。
プレイヤー達を猛獣の折りの中へ閉じ込めているも同義な、死の監獄の中。
なのにそんな中で寝ているなど、噂に酷いぐらいの尾鰭が付いたので無ければ、いっそ馬鹿としか言いようがない。
大方余裕で座り込んでいる様から勝手に予想したのだろう、そうあたりを付けてジンは鬱蒼と木々生い茂る中をただ黙々と進んで行く。
しかしながらここはゲームの中……現実では何にも会わずに目的地へといける事も可能であれど、決められたルールの敷かれた此処でそうはいかない。
「ウォォォオ! オォォオオオ!」
「出たか」
ポピュラーではあれどもそれなりの体躯を誇る狼型モンスターを前にし、ジンは己の得物である《蒼天》を抜き放つ。
身を縮めて跳びかかってくる狼に、その動作を如何系統モンスターでうんざりするほど見てきたジンは一歩下がり、体術スキル『弦月』のサマーソルトを顎にぶち込んだ。
ギャイン! と痛々しげな悲鳴には構わず、ニ回転して後方へと飛び仰向けになった狼へ、ジンは刀の有効範囲まで接近する。
横倒しに構えた刀が緑色に輝き……刹那目にも映らぬ一閃。
狼は刀スキル『辻風』の突進居合い切りで、赤い一文字を刻まれ更に吹き飛ばされた。
流石に一撃でポリゴン破片へと還す事は出来なかったが、それでも体
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