名を忘れた国家
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プ公国を拡張させても構わないさ。
独立後、同盟と正式に同盟関係を構築しないと、フェザーンは最終的には帝国に飲み込まれ、その後で同盟もすり潰される。
だからこそ、ワレンコフ氏をフェザーンに戻そうと考えているのだろう?」
それはヤンでも理解はしている。
現状は傭兵扱いで介入しているが、指揮系統の重複や他所の戦いへの介入の説明等フェザーンを支援することに対して疑問を持つ同盟市民がいるのも事実だったからだ。
先の権力闘争によって同盟に亡命したワレンコフ氏は同盟軍下部組織のPMCとして生活しており、彼をフェザーンに送り込む事でフェザーンをコントロールするのがこの作戦の骨子である。
「ルビンスキー氏はバックの地球教が弾圧されてから、政治的影響力の低下が著しい。
それでも、地球教の影響力はまだ無視できないだろう。
ワレンコフ氏の返り咲きに十二分に協力するよ」
聞きたいことは聞いたが、ヤンはだからこそド・ヴィリエ元大主教に訪ねなければならない事があった。
気を引き締めて、ヤンはそれを口にした。
「で、貴方は何を得るつもりなのですか?」
その答えを待つ間、ヤンに向けたド・ヴィリエ元大主教の笑みを忘れることはできなかった。
野心・野望・執念。
人が持つ欲望をこうも綺麗に取り繕えるのかという綺麗かつ白々しい笑みを晒したまま彼は望みを口にした。
「強いてあげるならば、抗議かな。
人形師への」
出てきた彼の名前にヤンは意外な顔をする。
けど、そんなヤンではなく、はるか昔に勝ち逃げした彼に対してド・ヴィリエ元大主教はその恨み節を言葉にして笑ったのである。
「道化のまま終わるつもりはないって事だよ。
ヤン君」
そして冒頭の頭を抱える二人に戻る。
聴き終わったド・ヴィリエ元大主教との会話のレコーダーを止めて、キャゼルヌ中将は気分転換にと彼の副官に飲み物を持ってこさせる。
しばらくして、キャゼルヌ中将付きである緑髪の副官が、コーヒーと紅茶の香ばしい香りをさせたお盆を持ってくる。
「そういえば、この味はヤンの功績らしいな」
「私じゃないですよ。
チャン・タオ氏のたまものです」
彼は退役時に昇進して兵長として退役したのだが、引退後の喫茶店は大盛況を見せており、数店舗にまで広げるまで繁昌していた。
その商売繁盛の秘訣は、彼の味を得るために送り込まれた最新鋭アンドロイドにあるのは間違いはない。
なお、商売そのものもアパチャーサイエンス社と業務提携した結果ショーケースとしての側面を持った最新鋭アンドロイド達によって経営されており、チャン・タオ氏は働かなくてもいい身分になってしまったが今でも本店で自らお茶を入れるそうだ。
二人がさしだれたコップに
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