暁 〜小説投稿サイト〜
乱世の確率事象改変
幕間 〜雛に秋恋、詠は月へと〜
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なければ。
 哀しきかな。彼女の妄想力は今回の事を盗み聞きしている時は抑えられても、それが終われば解き放たれる。
 噴水のように噴出さないだけマシではあるが、可愛い女の子が鼻血を流しながら停止しているのも、これはコレでホラーである。

「おねむのようですねー。しょうがないので二人で始めましょうか」
「稟ちゃんはこうなると長いですから、それが、懸命です」

 慣れた動きで稟の鼻に詰め物をして、彼女は手を口に当てて笑った。
 同意した朔夜も同じく、意地の悪い笑みを浮かべた。

「まず初めに、朔夜ちゃんは義妹になった事が間違いだと思うのですよ」
「なんですか、嫉妬ですか。妹ならではの、距離で秋兄様にくっつける私が羨ましいんですね」
「お兄さんは絶対に対象に見ないと言っているのですが。どれだけくっついても揺らがない鈍感さんですからねー」
「友達以上に発展するわけも、無い風ちゃんこそどうなんですか。それらしい発言でのらりくらりと気を引こうとしてる姿なんて、はっきり言って望みが無いです」
「風はお兄さんのお友達ですよー。朔夜ちゃんみたいにがっつく必要は無いのです」

 朔夜はむぅっと口を尖らせた。
 実のところ秋斗に一番信頼を寄せられているのは風である。
 友達関係を早くに確立した彼女は、軍師達の中で彼に一番近い。助言もするし冗談も言い合うし……朔夜としては面白くないのだ。
 恋でもしているのではないかと当たりを付けていたのだが、このように軽く流してはっきりしない。
 それでいて朔夜に対してアドバイスのようなモノをするのだから性質が悪い。

「……秋兄様に、惚れてるとかじゃないんですか?」
「ふふふ、お兄さんとは大人の関係という奴なのですよ」
「あ、有り得ませんっ! 確かに仕事上は、関わりが深いですけど無いはずです!」
「おやおや、朔夜ちゃんはどんな関係を妄想したんですか? 気になりますねー」

 冗談っぽく口にしてまたぼかす。
 朔夜の一番苦手なタイプだった。
 本心を引き出せない。絶対に言わない。風の心の防壁を突破できるモノなどそう居ない。
 何より、人をからかうのが大好きな風に勝とうと思う方が間違いである。

「ぐぬぬ……最近の風ちゃんはいじわるに、磨きがかかり過ぎ、です」
「華琳様の軍も変わってきましたからー。風も楽しんでいいかなと思いまして」
「……馬の一族への交渉役には最適です」

 がらりと話を変えた。このまま話ても収穫が得られないと思った。自分の勝てる土俵なら、というのもある。

「逃げましたね朔夜ちゃん。まあ、風は大人ですから乗ってあげましょう。手を抜く気はありませんよー」

 クスクスと彼女は笑った。碧色の瞳が冷たく輝いていた。
 合わせるように、朔夜はにやりと口を引き
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