幕間 〜雛に秋恋、詠は月へと〜
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微笑みを浮かべて雛里の頭を撫でやり、ぽつりと言葉を零した。
「確かに俺と黒麒麟は同じだ。似たような価値観のままでお前さん達に接してたと思う。
でもやっぱり……君だけは特別な存在だったんだと思うよ」
蒼い髪の少女に聞こえない時に、彼は黒麒麟の気持ちを予測して話す。伝わらないことに意味があるから。
「気持ちが繋がった時にさ、“好きだ”なんて言わなかったんじゃねぇかな?」
彼にだけ分かる言の葉で、彼にだけ分かるその時の心。
自分の役割を放棄してでもその子の幸せを願い、自分の命を使い果たしてでもその子の平穏を願った。
「黒麒麟は間違いなく……お前さんを愛してたよ」
誰にも零さない本心は誰の心か。
たった一人だけ、心の底からの笑顔で居て欲しいと思うその少女が、彼にとって特別でないわけもなく。
そして彼にとって、今のこの場所が自分のモノとは思えないのは必然で。
バレないように、嘘をつく。自分の心は知らない振り。気付かない振りだけが上手くなって、彼の渇望は色濃く深く染まり行く。
「どうか、君が幸せに暮らせますように」
記憶を失っても、やはり彼は――――
蛇足 〜朔夜に帳落ち風吹きて〜
声を出して話し、四人の時間を邪魔をするのは野暮というモノ。だから、三人の少女達はおやすみを合図に静かにその場を後にした。
そうしてついた夜の食堂で、彼女達の会議が始まる。
風と朔夜と稟であった。
「はいー。第一回、除け者にされた軍師達の会議なのですよー」
わーっと自分で言って自分で盛り上がるのは風であった。
桂花は華琳とお楽しみ中。雛里と詠は彼と寝台の上。では自分達は……そう考えると哀しいが、彼女達は気にしない。
「月姉様は、軍師ではないですが。
でも風ちゃんの邪魔さえ、なければ……秋兄様のお布団の中で私が、“すたんばい”していたはずなのに……」
「ふしだらはダメですよー? 朔夜ちゃんは期待しすぎなのです。
どれだけ願っても、『やん、すけべー、あっはんうっふんぎっこんばったん、なんて展開には成り得ません。さすがに女の子が下着姿で待っていたら不能でへたれなお兄さんでもケダモノに大変身するんです……なんてそんなのは甘い認識かとー。ねー、稟ちゃん?」
ぶぅたれる少女はジト目で風を見た。
面白そうだからと華琳は放っていたが、そこそこ秋斗のことを気に入っている風としてはその暴挙は許さない。軽く秋斗を貶しつつ、すかさず稟の答え辛い話題を振る。
「……」
ただ、答えは無い。
目を瞑って眼鏡を上げた動作のまま、彼女は眉を寄せて目を瞑っている。違和感はない。鼻から血を流してい
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