幕間 〜雛に秋恋、詠は月へと〜
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した。
無自覚だから性質が悪い。どこぞの昇龍のような貶して楽しむ呆れの声は、今は無い。
「もう……あんたってホント……呆れるわ」
そう言いながら不満そうな声と、寄せられた眉。詠は僅かにだが、頭を撫でられる雛里が羨ましい。
いつもなら怒っている所なのに、拍子抜けするような態度だったからか、秋斗も不審げに眉を寄せた。
気付かない鈍感男とは違って、雛里は彼の手を取って詠の頭を撫でた。
「ぅあっ!? ちょ、な、なにすんの雛里!?」
「い、悪戯でし」
「ボクは別に頭なんか撫でて欲しくないっ!」
それは撫でて欲しかったと言っているような返答になるのだが、慌てふためく彼女は気付かない。
無理矢理振りほどくわけにもいかなくて、どうしたらいいか分からずに悩む秋斗は、雛里と詠のやり取りを見るだけしか出来なかった。
「やめっ、ひなりーっ! やめなさいっってば!」
思わず出た大きな声に、彼の隣の小さな少女が身じろいだ。
「ん……」
その小さな声を聞いて、詠は急いで自分の口を塞ぐ。雛里も彼の手を放して真一文字に口を引き結んだ。
もぞもぞと動いて、月はまた彼の胸に頬を寄せる。すやすや、すやすやと優し寝息が聞こえ始めた所で、彼女達も秋斗もほっと息を付いた。
沈黙は静かに場を支配する。月明かりだけが差し込む窓辺の寝台の上、やはりソレを打ち破るのは彼だった。
「そろそろ寝るかね」
「そ、そうね」
「はひ……あわ……」
安らいで幸せそうに寝ている彼女は、今日の話を聞いていない。罪悪感も少しばかりあった。彼が気恥ずかしい恋愛沙汰の価値観などを饒舌に語る事態なんて無かった事だったのだから、自分達が特別だと感じてしまうのも詮無きこと。
誰ともなく、声を出した。
「おやすみ」
「おやすみなさい」
「ん、おやすみ」
不思議な関係は穏やかに。
跳ねる鼓動は確かにあるけれど、深くはなれない曖昧さ。
――ボク達が恋をしていても、あんたは家族や友達のように想ってるだけ。今は昔の延長線だと思う。でもね秋斗、前のあんただって雛里だけには……絶対にもっと大きな感情を持ってたのよ?
壊したくないぬるま湯の間柄で、この先に発展するには今は居ない大バカ者が必要だった。二人の幸せな姿を見たいと、詠は心の底より感じている。それはきっと、秋斗の言っていたことに似ていた。
ゆっくりと目を閉じた。
恋心と愛情が同居する心を覗き込んだ少女が、二人。ゆっくりと育まれてきた彼女達の心は、少しずつ少しずつ大人になっている。
暖かな温もりの中で、彼女達は次第に微睡みの果てに落ちて行った。
二人から静かな寝息が聴こえ始めた頃に、彼は優しい
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