五十話:束の間の休憩
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リの伸ばされたまま切られていない髪を撫でる。思わず、顔を赤くするヴァーリに向けてさらにイッセーは言葉を続ける。
「邪魔な髪だな、これでも使って纏めてろ」
そう、ぶっきらぼうに呟いてイッセーはヴァーリの髪をツーサイドアップ結い始める。そして、それが終わった後に赤色のリボンで固定する。初めての経験に固まるヴァーリに反してイッセーは何事もなかったように作業を終えたらさっさと離れていく。
「じゃあな。そいつは餞別にでも持っていけ」
「ま、待って!」
「あ?」
「……その名前を……教えてくれないかな?」
ビクビクとしながらそう尋ねるヴァーリに対してイッセーは何だそんなことかと、ばかりに呆れたような顔をして答える。
「兵藤一誠」
「イッセー……」
それだけ告げてイッセーは振り向くこともなく去って行くのだった。その姿を茫然と眺めるしかできないヴァーリはその首筋が赤くなっていることに気づくことは出来なかった。
『……ヴァーリ、そのリボンに書かれている文字がわかるか?』
「え、文字なんて書いてあったの?」
『ああ、幸せになりなさいだ』
「……幸せ。……優しいんだね、イッセー君は」
そう言って呟くヴァーリの顔は正に恋する乙女そのものの顔であった。そこで、イッセーの夢は終わりを告げる。ヴァーリが自分の膝の上から落ちた衝撃から目を醒ましてしまったのだ。相変わらずのドジっぷりに軽くため息を吐くが悪い気はしなかった。イッセーは夢の中の出来事から彼女に問いかける。
「……ヴァーリ」
「なに、イッセー君?」
「今、幸せか?」
キョトンとした目で一瞬イッセーを見つめるヴァーリ。だが、次の瞬間には質問の意味を理解して満面の笑みを浮かべて答える。
「うん、すっごく幸せだよ!」
「そうか……」
そう言って何でもないように再び目を閉じるイッセー。
だが、その口元が満足げに緩んでいたのにヴァーリだけは気づいていた。
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