五十話:束の間の休憩
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「おい、ハーフコウモリが何でこんなのとこにいる?」
「みんな…みんな…僕を虐めるんだ! うわあああっ!」
『よせ、ヴァーリ! そいつは―――』
イッセーのセリフにまた自分が拒絶され、虐待を受けると思ったヴァーリは幼き頃よりあるその才を十二分に使用した巨大な白銀の魔力弾をイッセーへと撃ちだす。目の前の少年の正体に気づいていたアルビオンが警告を飛ばすがそれは既に遅かった。
「うっとうしい」
軽々しく振られた拳により、魔力弾は跡形もなく消失する。それを見たヴァーリは茫然として立ち尽くす。一方、魔力弾を消失させた張本人であるイッセーは特に感慨の無い表情でヴァーリを見つめていたがやがて黙って歩み寄って来る。
アルビオンは己の感が間違いでなかったことを確信する。相手は争うべき今代の赤龍帝で、尚且つ自分の宿主よりも強い。自分の宿主が今までで一番の天才であることは間違いがないが、あれは天才などと言う人の縛りに含むべきものではない化け物なのだということを。
「ひっ! こ、こないで!」
「……………」
近寄るイッセーに対してヴァーリは自分の身を守るようにしゃがみ込み自身の体を抱きしめる。体を震わせて涙を零す様を見てもイッセーは顔に何の表情も浮かべずにただ歩み寄るだけだった。そして、ヴァーリの前の前で立ち止まりゆっくりと彼女の頭へと右腕を伸ばして―――撫でた。
「ふぇ……?」
「ハーフコウモリがイタリアのど真ん中にいたら殺されても文句は言えねえぞ」
「やだ……怖いの…やだ」
イッセーの口から出たのは遠回しな忠告だった。ハーフデーモンであるヴァーリがこのまま裏の教会勢力に見つかってしまえば子供であろうと容赦なく殺されてしまうだろう。そのことを伝えようとしたのだ。普段の彼であれば自分で殺していたかもしれないが今回は気が向かなかったのと、エルシャに対して対処の方法がなく苦しんでいた時期であったのでそのことまで頭に回らなかったのである。
イッセーの言葉を聞いたヴァーリは死への恐怖から体の震えが増す。実の家族から殺されかかった彼女には死への恐怖がこびりついていたのである。何とか命からがら逃げだして彷徨っているうちに辿り着いた場所で彼と出会ったのである。彼は忠告をしても立ち去ろうとしないヴァーリに対して少しイラッとした表情を見せる。別に立ち去らなかったことが気に入らなかったのではない。弱いくせに誰にも頼らない彼女が気に入らなかったのだ。
「湿気た面しやがって……てめえみたいな顔見てると苛々するんだよ」
「ご、ごめんなさい」
「ちっ……別に怒った訳じゃねえよ」
「ほえ?」
自分が怒られていると思って必死に謝るヴァーリ。イッセーはさら
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