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魔法科高校の神童生
Episode37:一と九十九と紫と
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。その動揺が、取り返しのつかない空白となった。

【肋骨骨折 肝臓血管損傷 出血多量を予測】

【戦闘力低下 許容レベルを突破】

【自己修復術式/オートスタート】

【魔法式/ロード】

【コア・エイドス・データ/バックアップよりリード】

【修復/開始ーー完了】

 それは達也の意識よりも速く始まり、達也が意識するより早く完了した。
 無意識領域での自己修復術式の使用。それは意識領域での魔法行使速度を大きく凌駕する。
 自分が倒された、と気づいた時は、既に身体の修復は完了している。

 蒼白になっている将輝の瞳が、信じられないとばかりに見開かれる。
 右足で踏み込み、不意を衝かれた将輝の顔面目掛けて拳を振り抜く。
 反射的に躱した将輝の顔の横を達也の右手が走り抜ける。

 元々当てるつもりのない軌道で放たれた右手の突きが将輝の耳元を通り過ぎた瞬間ーーー

 ーーー音響手榴弾にも似た轟音と、落雷の爆音が木霊した



☆★☆★



 ルアー解放の合図が鳴る。
 閉ざされた視界を開かぬまま、しかし標的は確と見据え、雷を落とす。それは正に第二ラウンド開始のゴング。
 開けた視界の向こう側。歪な笑みを浮かべて待ち構える男に向け、隼人は地を蹴った。

「フッ!」

 放つは五連発もの雷の矢。大会規定ギリギリの威力に絞られた雷速の矢は、しかし標的に当たることなく霧散した。
 高電圧の雷に焼かれた『盾』が崩れ落ちる。
 紫道が使ったのはレオのマントを硬化した盾だ。彼がどうやってそれを手元に手繰り寄せたのかは分からない。

「そんなのどうでもいい…!」

 距離を詰めつつ矢を放ち続ける。焼け焦げて使い物にならなくなった盾を投げ捨てて、紫道は驚異的な反射スピードと身体能力を以ってそれを躱す。

 地面が抉れ、土煙が舞う。

「摩天楼!」

 想像が力を持って具現化し、巻き起こった四つの竜巻が紫道を呑み込む。
 だがここで攻撃の手を緩めることはしない。敵の危険度はこれまでの接触で否応なく理解している。だからこその、追い打ち。

 放つは一つに束ねた四条の雷矢。世界を見通す眼をスコープ代わりに放った魔法は、間違いなく勝負を決する程の威力であった。

「ハァ…ハァッ…」

 限度を超えた魔法行使によって、脳がオーバーヒートを起こしている。
 手足が震えている。どうやら相当無理したようだ。
 これからは処理能力の訓練もしなければならない。



「モウ終ワリ、か?」


 ぞくり、と。
 恐ろしいまでの怖気が、背筋を撫でた。

「残念、ダ」

 地を這う雷撃が、全身を貫いた。



ーーto be continuedーー
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