Episode37:一と九十九と紫と
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れにより吉祥寺が発動しようとしていた不可視の弾丸の魔法式が破綻し崩れた。
「だらァッ!」
そこへ襲いかかる金属片。武装デバイスの空飛ぶ刃を、移動魔法で大きく後方へジャンプすることで躱す。しかし安堵する余裕はない。
突如巻き起こった突風。吉祥寺は冷静に負の加重系魔法で自身にかかる慣性を減らし、風に逆らわず飛ばされることで風撃のダメージを緩和させる。
(厄介な!)
舌打ちを漏らし、不可視の弾丸の照準をレオの後方に現れた幹比古へ向ける。
邪魔な援護から先に潰そうと考えたのだろうが、幹比古の灰色のローブに焦点を合わせた途端、遠近感が定まらなくなった。
陽炎のように滲むその姿に、吉祥寺は不可視の弾丸を逆手に取られたことを悟る。
「オラァ!」
気合い迸る。
頭上から凄まじい速度で振り下ろされるは『小通連』の刃。どうやっても回避不可能なタイミングに、思わず目を閉じた。
「ガァッ!」
果たして苦悶の声を漏らしたのは、吉祥寺ではなくレオだった。
達也の相手をしていたはずの将輝が、自身の参謀の危機を感じて援護したのだ。将輝の放った圧縮空気弾はレオの脇腹に完全に命中。凄まじい威力だったはずだ。しばらくは目を覚ますことはないだろう。
だが、その援護が将輝に決定的な隙を生じさせた。
彼の判断は決して間違っていなかった。敵を一人倒して味方を一人救ったのだから、寧ろ限りなく正解に違いないだろう。現に、救った味方はもう一人の敵を地面に叩きつけることに成功した。
だが、ここで一つ誤算が生まれた。
目を離してはいけなかったのだ。魔法を行使する際は、必ず意識は行使すべき対象へと向かう。この場合の将輝は、レオや吉祥寺に意識が割かれていた。
故に、今まで空気弾で足止めを行っていた達也への弾幕が薄くなっていた。
数字にすればほんのコンマ数秒。しかし、それだけで達也が相当の距離を詰める事は十分可能だ。
彼我の距離が僅か数メートル。流石に焦ったのか。それとも実戦を経験した兵士の持つ、脅威に対する直感か。
レギュレーションを超えた威力の圧縮空気弾が十六連発で達也に殺到した。
圧倒的なその光景を見て、達也は瞬時に術式解体での対処は不可能だと判断した。しかし、達也は決して機密指定である術式解散を使おうとはしなかった。
その結果、迎撃は十四発までしか間に合わず、達也は最後の二発の直撃を受けた。
「やってしまった」と、将輝は自身の足元に沈む達也を見て表情を凍り付かせた。
あれだけ紫道に向けて過剰攻撃を止めさせようとしていたのに、自分は危機的衝動に駆られて明らかな規定オーバーの魔法を放ってしまった。
最悪だと、将輝は自分を罵る
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