Episode37:一と九十九と紫と
[7/9]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
ち落とす。
幾つものサイオンの波動が舞う。幻想的な光景に、モニターを通して試合を観戦する観客は虜になっていた。
戦況は一目見ただけでは拮抗しているように見える。だが、徐々にだが、確実に達也の処理が追いつかなくなってきている。それを不利と悟ってか、達也は歩みを止め、そしてそのまま将輝目掛けて走り始めた。
その転換に、しかし将輝は冷静に対処する。
数と精度が増した弾丸。致命傷と成り得る弾丸のみを術式解体で潰しながら、達也は草原を疾走する。
だが、残り五十メートルを切ったところで、達也は遂に将輝の攻撃を捌ききれなくなった。潰し損ねた圧縮空気弾が襲いかかる。
前後左右、一分の隙もなく殺到する空気弾を、達也は身につけた体捌きを以って躱す。
残り数十メートル。僅か数歩の距離が、達也の前に分厚い壁として立ちはだかっていた。
吉祥寺真紅郎。その名で有名なのは、やはり基本コード仮説の内、加重系統プラスコードを発見したことだろう。その時に拝命した渾名が『カーディナル・ジョージ』だ。
『基本コード仮説』というのは、加速、加重、移動、振動、収束、発散、吸収、放出の四系統八種にそれぞれ対応したプラスとマイナス、合計十六種の基本となる魔法式が存在しており、この十六種類を組み合わせることで全ての系統魔法を構築することができるという理論だ。
基本コードを使用した魔法は、作用力そのものを定義する為、一般の魔法に不可欠な事象改変結果を定義する必要が無い。
例えば、加重系魔法である『破城槌』と吉祥寺が得意とする『不可視の弾丸』は同じ効果を有する魔法だが、『破城槌』は圧力をかける面全体の状態を、加重点に圧力がかかった状態に丸ごと改変する必要がある。
それに対し、『不可視の弾丸』は、圧力をかける面ーーそれは壁面でも床面でも人体の表面でも何でもいいーーの状態を書き換える必要はない。『不可視の弾丸』は圧力そのものを書き換える魔法だ。
九十九家長女である九十九スバルが使う『圧神』はこの世に存在する全ての圧力を自在に操るBS魔法であるから、言うなれば『不可視の弾丸』は『圧神』の下位互換とも言える。
とは言え、不可視の弾丸が厄介なのに変わりはない。なにせ通常魔法を発動するのよりも魔法式はずっと小さなもので済む上、対象物そのものの情報を改変するものではないため、対象となる事象の情報改変を妨げる『情報強化』では防御することができない。
ただし、この世総ての現象には須らく弱点がある訳で。
『不可視の弾丸』は、発動させる対象物を魔法師が直視しなければならない。
そう、レオが脱ぎ捨てたマントが、硬化魔法によって翻り広がった姿のまま固まってレオの前に突き立つ。こ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ