Episode37:一と九十九と紫と
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を交えることなく、一高の勝利で幕を閉じた。
☆★☆★
決勝戦は三位決定戦の後に行われる。
決勝戦以外のモノリス・コードの試合時間はどんなに長くても三十分以上掛かることはないが、決勝開始時刻は余裕を持って今から二時間後、午後三時半と決定された。
「やぁやぁ、お待たせしてしまったみたいで」
「…いえ、俺も丁度今来たところです」
相変わらずの間抜け面に、張り詰めていた緊張感が弛緩してしまう。
場所はホテルの外の雑木林。木の幹にもたれ掛かっていた隼人は、待ち人の登場によりその姿勢を正した。
エリナの上司にあたる魔法記者、木場則武から連絡があったのはついさっきのことだ。
「どうやら随分と派手にやったみたいだね」
「……」
この際、何故知っているのかという疑問は棚上げすることにした。
彼が言っているのは、十中八九、無頭竜の東日本支部に乗り込んだことだろう。どれだけ無謀で危険な事をしたか、自分でもわかっているつもりである。
「別に責めるつもりはないよ。ただ、奴らが拠点を変えざるを得ない状況にするのは、君にしては少し浅慮だったなと思っただけさ」
「…面目無いです。俺は、少し焦っていました」
そう、焦っていた。
エリナがいなくなったのを聞いて、自分でも驚く程に冷静ではなくなっていた。
「ん、反省しているならよし。ああ、無頭竜の次のアジトはもう見つけてあるよ」
なんて呑気に言いながら、手渡してきた紙を受け取る。恐らくここにアジトの位置が書いているのだろう。しかし、隼人はそれを読むことなくポケットに仕舞い込んだ。
「木場さん、あんた何者だ?」
薄暗い雑木林の中、時折射し込む陽光が蜘蛛の巣のように張り巡らされたワイヤーを照らし出す。
「…ひょっとしなくても命のピンチ?」
首に食い込んだワイヤーを見て木場が汗を垂らす。これを目の前にいる高校生が加速、移動の複合魔法を使って一瞬で作り上げたのだから恐ろしい。
「惚けるのもここまでだよ。アンタは情報を手に入れるのが早すぎる……直接的な害はないにしても、危険な存在なことに変わりはない」
紅い瞳が木場を睨む。その手を引けば、すぐにでもワイヤーは彼の首へ喰い込み、最後には切り飛ばすだろう。
「惚けてなんかいないさ。僕はこれが通常運転でね…癇に障ったのなら謝るよ」
それでも、目の前の男は余裕を崩さない。それなりの殺気も交えた威嚇だったのだが、どうも効果はないようだった。
「誓おう。僕は心の底からエリナを心配し、取り戻そうとしている。なんて言ったって可愛い義理の娘だ、親心って言えば、君は信用してくれるかな?」
瓶底眼鏡から覗く瞳は、初対面の時の気怠げなも
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