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魔法科高校の神童生
Episode37:一と九十九と紫と
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て、このライバルに、持てる力全てで挑みたい。

 けど、それでも。

「それでも……もうこれ以上、斃れていく人を、見たくはないんだ」

 一条将輝という男は、天性の負けず嫌いなのに加えて、責任感も人一倍だ。故に、自分の力不足が原因で他人が傷つくのを許すことができない。

 しかしそれは、この場に於いては邪魔だった。

 下から伸びてきた腕が、将輝の胸ぐらを掴んで引き寄せる。

「今までの選手のように、俺達が傷つくのを見たくない? 俺達と彼らを一緒にしないで欲しいね」

 誰もが強くなろうと努力しているのを知っている。他の高校の選手だって、きっと懸命に努力し続けているのだろう。
 でも、それ以上に努力している人を知っている。
 事故のせいでうまく魔法が使えなくなって、それでも強くなろうと必死にもがいている人を知っている。
 もがいて、足掻いて、今なにかを掴みかけている。それを、邪魔させてたまるか。

「あんまり、俺達をナメない方がいいよ」

 それに、気に食わなかった。
 紫道に、自分達が負けると思われたことが。
 将輝にそんなつもりはなかったのだろう。ただ、リーダーとしての責任を果たす為の行動。しかしそれは結局、紫道によって一高の誰かから怪我人が出ると想定した故の行動だ。

「狂人だろうが、クリムゾン・プリンスだろうが、カーディナル・ジョージだろうが、誰が来ようと俺達は負けない」

 なにより、紫道と戦う機会が失われればエリナの奪還は困難になる。
 奴は自分を倒せばエリナについて教えてやると言っていた。そのチャンスを、逃す訳にはいかないのだ。

「だから一条将輝。後先の事は気にせず、俺達に全力で…殺すつもりでかかって来い」

 紅い瞳が、将輝を睨む。
 強い意志を宿しているが、紫道のようにどうしようもない狂気に呑まれてはいない。
 ただ純粋に、彼は自分達と戦いたいと思っているのだと将輝は感じた。

 ならば、その意志に報いるには、もう一つしかない。

「…そこまで言われて、引くのは余りにも癪だな」

 自分を負かしたライバルが大丈夫だと言ったのだ。信じる理由は、それだけで十分。
 闘志には闘志で。全力には全力を返すのが礼儀というものだ。

「お前を信じよう。九十九」

「隼人でいいよ、将輝。戦う時を楽しみにしてる」

 今まで萎えていた足に、力が戻っていくのを感じる。
 既に三高の決勝進出は決定している。後は、一高が登ってくるのを待つのみ。それまでに、自分や他のメンバーのやる気を取り戻させなければならない。

「ああ。俺もだ、隼人」

 けれど、それを面倒だとは思わなかった。
 勿論、完全に吹っ切れた訳ではない。紫道によって傷つけられた選手達に対する申し
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