Episode37:一と九十九と紫と
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コードで優勝する為にはあの狂った化け物を倒さなければならないのだ。気分が落ち込むのも仕方ない。
とは言え、今の所達也に優勝する気はない。彼に真由美から与えられたのは、『新人戦の優勝』であって、その目的は恐らく、次の九高との試合に勝てばほぼ達成される。
「あれ、そういや隼人は?」
「隼人なら、試合終わってすぐにちょっと用を思い出したとか言ってどっかに行っちゃったよ」
しかし、もし友人が優勝を望むのなら、それを叶えてやる位の気概は達也も持っている。
さて、どう戦ったものかと考え始めた達也は、案外友人思いなのかもしれなかった。
「どこに行くんだい?」
不意にかかった声に、足を止める。俯けていた顔を上げると、目の前に九十九隼人が立っていた。
棒倒しで自分を下した魔王。自分に試合の楽しさを教えてくれたライバル。
そんな相手に、今の自分を見られたくなくて、思わず将輝は顔を背けた。
「……君には関係ないさ」
絞り出した声は、少し震えている。それが余計に情けなく思えて、思わず拳を握り締める。
「ーー棄権するつもり?」
反射的に、正面を見る。
冷たい目をした隼人が、将輝の行く手を阻んでいた。
その姿に、今まで抑え付けていた激情に再び火が付いた。
「……仕方ないだろう。これ以上、あいつを野放しにして、他校の選手が傷つくのを、見てる訳にはいかない」
「それは三高全員の意思?」
「…そうだ。皆で相談して、決めたことだ」
他校の選手に大怪我させてまで、優勝することになんの意味がある。たかが親善試合。命を懸けて戦う戦争とは違うのだ。
故に、魔法師を束ねる十師族として、否、人としてのケジメをつける事に決めたのだ。
「……じゃあ、君はそれでいいのかい?」
思わず、目の前に立つ男の事を睨んでしまう。
自分よりも低い身長の彼は、見下ろす視線に屈すること無く、その視線を受け止めていた。
「……どういう意味だ?」
「三高としてでも、一条としてでもなくて、『一条将輝』として、棄権するのを許せるのかって意味さ」
世間体や体裁を考えずに、一個人としての、一条将輝としての意見。
それは、この場に於いては黙殺しなければならないものだ。
必死に抑え込んだ感情。
ただ一つ。『負けたくない』という思いが、将輝を再び燃え上がらせる。
「ーー君は、勝負から逃げた『負け犬』として終われるのか?」
気づけば、自らの手は目の前の男の胸ぐらに伸びていた。
身長の低い彼は、自然将輝に持ち上げられる形になる。
「終われる訳ないだろッ」
戦わずして負けを認められる程、素直な性格ではない。
本当ならば戦いたい。戦っ
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