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魔法科高校の神童生
Episode37:一と九十九と紫と
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 紫道聖一という男に対しての不信感は、初めからあった。
 それこそ、彼が三高に編入してきた時からずっと。

 隠すつもりがないのか、剥き出しにされたままの殺気。不自然な程に途切れ途切れの喋り方。異様なまでに高い魔法力。そして、敵に対する必要以上の過剰な反応。

 この男は危険だ。そう分かっていた。


 それなのに。

「ぐッ…!?」

 大規模な雷撃に見舞われた岩が砕け散り、弾け飛んだ瓦礫が舞う。
 敵・味方関係無しに放たれるは『スパーク』と名付けられた放出系統の魔法。放出系魔法の中では基礎的な魔法で、効果範囲は狭い。
 だが、それは『紫道聖一』という男が発動する事によって、全く違う様相を見せる。

 岩場ステージ、その全てを覆い尽くす雷撃の嵐。なんとかそれを干渉装甲により無効化するが、将輝に今の紫道を止める術はない。

「くそ…ッ」

 試合相手である八高の選手は、ルアーを残して全てが紫道によって叩きのめされた。
 辛うじて立っているルアーでさえ、既に息も絶え絶え、意識を繋ぎ止めるので精一杯という状態だ。

 彼が危険だと分かっていたはずなのに。
 『まさかここまではしないだろう』と高を括っていた結果がこれだ。

 倒れている八高の選手は、雷撃による火傷に加え、岩によって押し潰されている。恐らく、暫くは病院で集中治療を受ける事は免れない。

 歯を食いしばって、八高のルアーの前まで歩みを進める紫道を睨む。
 
 何故、ここまでの事を平然とできる?
  何故、試合相手にここまでの仕打ちをする?
  何故、お前は、この惨状を見て笑っていられる。

「紫道ォォッ!」

 CADの銃口を、今正に八高ルアーにトドメを刺そうとしている紫道へ向ける。
 高電圧の雷撃が肌を焼くが構わない。それくらいでは、彼らへの償いにはならない。

 収束系魔法『偏倚解放』が、紫道の身体を吹き飛ばす。それと同時に雷撃も止み、八高のルアーも倒れる。

 試合終了のブザーが鳴った。
 殺意を宿した紫道の目と視線が合う。成る程、邪魔をした此方を非難しているのか。
 その視線に、怖気付いている自分がいることを、将輝は冷静に把握した。

 紫道が試合に解放される前に試合を終わらせるのは不可能だった。その為に起きた今の惨状。
 焼け焦げた地面を見て、将輝は最早自分の手に負えない事を理解した。
 悔しさと申し訳なさが綯い交ぜになって、握り締めた手のひらに爪が食い込んで血が流れる。

「クソッ……」



☆★☆★



「ここまでとはな…紫道聖一」

 新人戦モノリス・コードの決勝トーナメント初戦である三高と八高の試合を観戦していた達也は、面倒そうに溜息をついた。
 モノリス・
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