第二百七話 甲斐姫その九
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「そしてです」
「甲斐姫様と共に」
「ここにこうして」
「堤を壊させて頂きました」
「気付くのが遅かったか」
石田は唸る様にして言った。
「早いうちに物見を出していれば」
「私の攻めを防げたと」
「そう出来たやもな」
「そう仰いますか」
「今言っても仕方ないことにしても」
それでもだ、大谷は今は言わずにはいられなかった。それで言うのだ。
「無念よ」
「桂松、そこか!」
「そこにおられましたか!」
大谷の後ろから石田と島の声がした、そしてだった。
大谷のところに来てだ、甲斐姫と風魔の者達を見た。石田は彼の姿を認めてすぐに刀を抜いて構えつつ言った。
「御主が甲斐姫か」
「貴方が石田三成殿ですね」
「そうじゃ、この城を攻める将じゃ」
まさにそうだとだ、石田は前に出つつ答えた。
「しかし。やってくれたな」
「佐吉、ここはわしに任せよ」
大谷は自ら甲斐姫に向かおうとする石田に言った。
「後詰はわしじゃ」
「だからか」
「そうじゃ、ここはわしに任せよ」
こう言うのだった。
「堤の音を聞いて言ったな」
「うぬ、あそこじゃ」
石田は彼等から少し離れた場所の堤を指差した。そこで堤が崩れていて水があらぬ方に雪崩込みだしていて凄まじい音を立てていた。
「やられたわ」
「そうじゃな」
「水の勢いが強い」
城とは全く違う方に向かっているそれがというのだ。
「だからじゃ」
「ここはか」
「後詰を言ったが」
それでもだというのだ。
「水の勢いが強くここまで来るやも知れぬ」
「確かにな、あの流れは」
大谷もその水の流れ、月の明かりに照らされたそれを見て言った。
「こちらに来るやもな」
「下がるぞ、ここは」
「そうじゃな、兵達はどうした」
「既にです」
島が言って来た。
「ここにおる者達以外は下がらせています」
「左様か」
「はい、ですから」
それでというのだ。
「ここはです」
「わしが後詰をして」
「下がりましょう」
「それがよいな」
「それでは」
こう話してだ、石田は島と共にその場にいる兵達を収めそのうえで先に退きだした、そして大谷はというと。
その槍で甲斐姫と一騎打ちを演じた、夜の闇の中で槍と薙刀が激しく打ち合い白銀の光を放っている。その中で。
大谷は甲斐姫にだ、こう言った。
「おなごといって侮らぬつもりじゃが」
「如何されましたか」
「おそらく巴御前はこうしたものだったのだろうな」
古の彼女はというのだ。
「まさに御主は巴御前の生まれ変わりじゃな」
「そのお言葉嬉しく思います」
「そう思うか、わしではな」
大谷も果敢に戦う、しかしだった。
「御主は倒せぬわ」
「私もです」
甲斐姫は薙刀を縦横に振るう、しかし。
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