第四十七話 院長の話その四
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「同じ細胞でも」
「クローンは老化が速いというけれど君達は違うしね」
普通の人間と同じ育て方だ、間違いなく。
「そのことからもそう言えるね」
「それで誰が私達を造ったんですか?」
鈴蘭は院長にこのことを尋ねた。
「一体」
「いや、それはね」
「それは、ですか」
「私も聞いていないんだ」
伯爵から、というのだ。
「一切ね」
「何だよ、そこは言わなかったのかよ」
「そう、けれどね」
「けれど、か」
「君達、特に薊ちゃんのことはね」
やはり薊を見つつだ、院長は話すのだった。
「科学的に言われたよ」
「そうなんだな」
「うん、DNAの鑑定結果も見せてもらってね」
「それでか」
「とはいっても私は科学的知識はね」
このことについてはだ、院長は苦笑いで言った。
「あまり詳しくないがね」
「それでもなんだな」
「うん、薊ちゃんの身体は潜在的に力が宿されていたんだ」
「火とかを出したりする力か」
「その身体能力もね」
「錬金術とかが入っていたんだな」
薊はしみじみとして言った。
「あたし達の中に」
「そう、錬金術や科学、魔術を入れた人造人間がね」
「あたし達なんだな」
「そうなんだな」
「そうか、けれどな」
ここでまた言う薊だった。
「院長さん別にあたし達を化けものとか言わないな」
「何処が化けものなのかな」
院長は薊の今の言葉に目を瞬かせて問い返した。
「薊ちゃん達の」
「いや、人造人間で中に錬金術とかが入っていてな」
「それで化けものだっていうんだね」
「違うのかよ」
「薊ちゃんは薊ちゃんじゃないか」
院長は微笑んでこう薊に言葉を返した。
「違うかな」
「あたしはあたしか」
「人間はどうして人間なのかな」
薊への問いは優しい顔で目の光も温かいものだった。
「それは」
「人間はか」
「そう、どうしてかな」
「院長さんいつも言ってたよな」
「うん、人間は心でなるんだよ」
それで、とだ。薊に対して問うたのである。
「姿形や力じゃなくて」
「そうだよな、心でだよな」
「薊ちゃんにも他の皆にも言ってたね」
「心が化けものになると化けものってな」
「世の中にはそうした人もいるよ」
実際に、というのだ。
「どうしようもなく悪い心を持っている」
「屑っていうかな」
「人でなくなった存在がね」
実際にというのだ。
「そうした人がいるから」
「心で、だから」
「薊ちゃんは人間だよ」
このことを強く言うのだった。
「何処もおかしなところがないね」
「じゃああたしはずっとか」
「私達の子供だよ」
やはり優しい顔で言うのだった。
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