6部分:第六章
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に対しても言う。
「どうしようもないわ」
「今宵はこのまま帰るわ」
「いやいや、それには及ばぬ」
しかしここできんきん声は彼等を呼び止めてきた。
「何じゃ?」
「今宵も楽しくやろうぞ」
「楽しくじゃと」
「そうじゃ。もう用意してあるぞ」
こう言って後ろを指し示すと。そこには酒と肴、それに菓子等が山の様に置かれていた。既に用意してあるのだった。
「さあ遠慮はいらんぞ」
「もうあるのか」
「用意がいいのう」
「だからじゃ。早く食うがいい」
また妖怪達に対して述べる。
「何度も言うが遠慮する必要はないからな」
「遠慮せんのがわし等じゃが」
「しかし」
「それはそれ、これはこれじゃ」
項垂れる妖怪達に対してまた言ってきたのだった。
「早く食べよ。よいな」
「これはこれ、それはそれか」
「違うか?御主等は確かに化かされた」
彼はまた言う。
「じゃがそれはそれではないか」
「そうか」
「そうじゃ。だから早く食べよ」
「ううむ」
「遠慮はいらんか」
「だから何度も言っておろう」
きんきん声はいい加減不気味なまでに遠慮する彼等に対して顔を顰めさせてきた。
「早く飲んで食うがいい。あやかしは遠慮せんのじゃろう?」
「ううむ、そうじゃな」
「それでは」
何度も言われて彼等も遂に従うことにした。静かに酒や菓子のところに向かいそれをきんきん声を中心に置いて円座を作った。そこにそれぞれ座るのだった。
「ではそうさせてもらおう」
「喜んでな」
「うむ。しかし何じゃな」
彼等が座りそれぞれ言ったところできんきん声はまた言ってきた。
「こうしてみればあやかしも面白いのう」
「ほっほっほ、そうじゃぞ」
今の彼の言葉にはあやかし達も笑ってみせる。
「妖怪の世界は楽しいぞ」
「一度なればもう止められぬ」
「止められぬのか」
「御主も人でなくなったら妖怪になれ」
かなり奇妙な言葉ではある。
「嫌なことは何一つないぞ」
「何一つか」
「そうじゃ、何もな」
「だからいいのじゃ」
彼等は口々にきんきん声に対して言う。
「そうじゃな、御主はさしづめ」
ももんじいがきんきん声を指し示して笑いながら述べる。
「きんきん声じゃな。その声で」
「ははは、そうじゃな」
それにぬらりひょんも頷く。やはり彼も笑顔だった。
「声がそれじゃからな。やはりな」
「ふむ、妖怪きんきん声か」
本人もそれを言われてまんざらではないようだった。
「では五十年の人間、それが終わったらなってみるとしよう」
「うむうむ、待っておるぞ」
「楽しみにしておるからな」
妖怪達は今のきんきん声の言葉を受けてどっと笑って言ってみせた。京の都であった面白い話だ。古い話だが幸いにして伝わっている話で
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