3部分:第三章
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彼等はもうこれからのことが楽しみで仕方がなかった。
「見てみたいのう」
「特に驚く顔が」
「正面から行くぞ」
ぬらりひょんは今から楽しみで仕方がないといった様子の仲間達にまた言う。
「よいな」
「よし、わかった」
「参ろうぞ」
「きんきん声のところにな」
こうして彼等は姿を消したまま城の奥に向かうのだった。城というよりは屋敷でありそこを進んでいくのは彼等にとってみても存外楽しいものであった。
「いやいやここもまた」
「いいものじゃのう」
こう言いながら奥に奥にと進んでいく。その頃その城の奥では。
「今宵は随分と騒がしいのう」
「何でもあやかしが出たとか」
「あやかしとな」
「はい」
奥の座敷であった。そこで若い小姓が上座にいる細面の男に対して述べていた。見れば顔は白く髷は総髪を後ろにやっている感じだ。鋭利な鋭い目をしていて全体的に剣呑な印象を与える。だがそれでも美形といっていい顔ではあった。
「今宵都のあちこちで出ているそうで」
「ふむ、嘘であろう」
男はそれを聞いてすぐにそう述べた。
「大方酒に酔っておるのじゃ」
「酒ですか」
「そうじゃ。だからそんなものを見るのじゃ」
男は小姓に対してもこう述べる。
「そうではないのか?」
「果たしてそうであればよいのですが」
小姓は畏まりながら彼に言葉を返す。
「どうなのでしょうか、そこは」
「何か言いたそうじゃな」
「それは」
「よい」
ここで言葉を許すのだった。
「許す。言ってよいぞ」
「宜しいでしょうか」
「そちの考えを聞いておきたい。どう考える」
「都は昔よりそうした話が多いです」
彼は男の許しを得てからこう述べるのだった。
「ですからやはり」
「あやかしだと思うか」
「そうではないでしょうか」
あらためて男に対して答えたのだった。
「やはり。これは」
「あやかしか」
男は小姓の言葉を聞いてそれまで両膝にそれぞれ置いていた手を服の中に入れてそのうえで組むのだった。考える姿勢である。
「まことにおるか」
「いるのでは」
また男に対して答える小姓であった。
「やはりそれは」
「おるならおるで見てみたいわ」
男はあらためて答えた。
「この目でな」
「この目で見ないことにはわからん。さて」
男は腕を元に戻した。そしてまずは灯りを見た。灯りは彼の顔を静かに照らしている。その周りには虫が少し寄っていた。だがその虫には構わずにまた小姓に顔を戻すのだった。
「もう遅いな」
「休まれますか」
「いや、暫しここにおる」
だが彼は今は休まないと言うのだった。
「ここにな。しかしそなたはもう下がってよい」
「左様ですか」
「元の持ち場につけ」
そして今度はこう述べた。
「よい
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