第1部 沐雨篇
第2章 第4艦隊付幕僚補佐
008 イゼルローン回廊外遭遇戦
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15分足らずでそこまで持って行けるか』
フロルはそこで憎たらしいまでの笑みを浮かべた。
「フィッシャー中佐ならば可能でしょう。もしもこの戦いが無事に終わった暁には、艦隊運動のイロハを本官にご教示願いたいですね」
『そのためにはまず目の前の敵をどうにかせねばなりますまい』
フィッシャーは苦笑いをしたが、その一方でこの若者に感嘆の眼差しを送った。
「今は時間が宝石よりも貴重です。急ぎ、よろしくお願いします」
『了解した』
リシャールは敬礼をし、フィッシャーもそれに応えた。
作戦はこちらの思惑、相手の思惑、そして運によって推移する。
今回に限って言えば、フロルはその思惑を読違えなかったし、運もまた彼に味方したようであった。
慌てて集まった幕僚団が司令部に到着する頃には、既に戦端は開かれていた。作戦はフロルの立案のまま進行し、そして終了したのである。遅れてきた幕僚が口を出そうにも、左側艦隊の指揮を任されたフィッシャー中佐には戦闘状態のため連絡が付かず、さらにフロルの案を上回る代替案が見つからなかったからである。
同日8時2分、敵艦隊は同盟艦隊の中央を突破。そのままイゼルローン回廊へ直進するかに見られた。9時5分、それを見越した旗艦レオニダス率いる1500隻の艦隊が後背を追撃。追撃は5時間にわたって行われ、擬態された中央突破よりも、遥かに多い被害を同盟軍は帝国軍に与えることに成功したのである。
第4艦隊本隊が援護に来た時には、500隻まで撃ち減らされた敵艦隊はイゼルローン回廊に逃げ込んでいた。艦隊数こそ小規模であったが、同盟軍にとって久方ぶりの完勝となったのである。
パストーレ准将はこの《イゼルローン回廊外遭遇戦》において、旗艦レオニダスで卓越した指揮を執ったとして少将に昇進、一躍、時の人となった。その影に隠れ遅れるように、パストーレ少将の推薦でフロル・リシャールが大尉になったのは半年後のことである。
パストーレのフロルに対する信頼は、この一戦を持って確固たるものになったのである。
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