第1部 沐雨篇
第2章 第4艦隊付幕僚補佐
008 イゼルローン回廊外遭遇戦
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を繋げるまでの一瞬で、多くを考えた。
敵の速度、敵の進行方向、現宙域の地理的位置関係、敵の陣形……。
こういう時に、彼の指針となるのはヤン・ウェンリーであった。彼であれば、いったいどう考えるか。そして将来の彼がいったい何を成したか。
それがフロルという軍人を形作っていたのだーーヤンの知らないところで。
「機動部隊長のフィッシャー中佐に繋げてくれ!」
そしてフロルは知っていた。原作で生きた航路図と呼ばれた、艦隊運動の達人がこの分艦隊にいることを。
***
『フィッシャー中佐であります。司令部からとのことでしたが』
フィッシャーは通信で現れた、明らかに自分よりも若い中尉を見て眉を顰めた。
「リシャール中尉であります。パストーレ准将からの指令をお伝えします」
その言葉にフィッシャーは軽く目を見開いた。迅速な対応にもしかしたら驚いたのかもしれない。
「我が艦隊を2つに分けます。敵が来襲する右側艦隊は小回りの効く艦を右に90度回頭させ、装甲の厚い艦を盾にその間から攻撃を加えて下さい。敵の直撃をまず緩和し、次いでわざと敵艦隊に我が艦隊の中央を突破させていただきたい。その間に左側艦隊を左に90度回頭させ、我が艦隊中央を突破した敵艦隊の後背を突きます」
ヤンのとったアスターテ会戦の小規模再生産といったところであった。もっとも、この時にはまだ発生していないが。
『敵艦隊が我が艦隊を突破後、後方展開した場合はどうしますか?』
「敵艦隊の目的は我が艦隊の中央を突破し、イゼルローン要塞への帰還だと推測されます。敵は紡錘陣形をとり、高速でイゼルローン回廊方面に進行しています。そもそも帝国艦隊が3000隻程度で、同盟軍の支配宙域で艦隊戦をする意味はありません。ここまで入り込んでは補給線もまともに維持できないはずだからです。であるならば、敵艦隊の目的は現宙域の支配でも、我が艦隊の撃破でもないと考えるのが妥当です。この戦いは敵にとっても意図しないものだったのでしょう」
フロルは一息で説明をしたが、それによってフィッシャーは目の前の若者がこの作戦を立案したことを暗に理解した。だがフロルがパストーレの名を出した以上、そのことを指摘する必要はないのである。
怠惰な司令部が指揮するこの艦隊で、このような遭遇戦に巻き込まれた不幸を呪っていたのはフィッシャーだけではなかったが、まともな指令が下されるのは大歓迎であった。
「万一、敵が突破後、展開を図るのであれば、左側艦隊でそれに対処しつつ、全艦隊撤退します。互いの位置が変われば、イゼルローン回廊に逃げ込めるわけですから、撤退する我が艦隊を追うことはないでしょう。フィッシャー中佐には右側艦隊の指揮をお願いします。左側は旗艦でとります」
『これは賭けですな。あと
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