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銀河英雄伝説 異伝、フロル・リシャール
第1部 沐雨篇
第2章 第4艦隊付幕僚補佐 
008 イゼルローン回廊外遭遇戦
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換えされたのである。


***


 フロル・リシャール中尉は第4艦隊カタイスト中将麾下の分艦隊ラウロ・パストーレ准将の元へ着任した。リシャール中尉はパストーレ准将のもと、作戦立案・艦隊運用計画などを担当し一定の評価を得て、パストーレ准将の信認を得ることに成功する。もっともそれは准将直属の幕僚団にも問題があったからでもあった。
 ラウロ・パストーレは宇宙暦755年、士官学校を中の上の成績で卒業。後方任務と同盟領土の守備任務を主として、昇進を重ねた。中規模以下の艦隊戦闘においては一定の作戦遂行能力を有していたということであるが、逆にそれが彼の限界であったのかもしれない。30代を前にして国内のタカ派政治家と親交を深め、785年准将に昇進。第4艦隊指揮下の分艦隊の指揮官となった。キャゼルヌであれば「財布が軽くなる度に昇進を手にした男」とでも言うであろう。

 第4艦隊を指揮するカタイスト中将自身は一兵卒からの叩き上げで艦隊指揮官にまで登り詰めた男で、同盟軍将兵からも絶対的な信頼を獲得していた。その指揮ぶりはアレクサンドル・ビュコック中将や帝国軍ウィルバルド・フォン・メルカッツ大将とも引けをとらないとされていた。
 だが一方で政治的な立ち回りは苦手であり、自分の指揮下分艦隊にラウロ・パストーレ准将が任命にされた政治的な取り引きにも、従うしかなかった。彼自身が退役年齢に近づいており、国内の有力な政治家に反対することで退役後の待遇が悪化することを忌避したためとも言える。
 150年続いた戦争は、戦争の日常化を招いた。この程度の政治家の恣意的な軍部への介入は珍しいことではなかったのである。有するべき能力を持たない人間が、あるべきでない地位に就く。それによる軍の能力低下を問題視する人間は、既にいなくなっていた。

 そのような経緯で任命されたパストーレ准将の幕僚団が正常に機能するべくもない。個人的かつ私的なルートで昇進を試みた人間が多く集まってきたのである。第4艦隊パストーレ分艦隊上層部の機能低下が進行する中、まったくの外部からやってきたフロル・リシャール中尉の能力は相対的に重宝されたのである。

 そんな同盟軍第4艦隊麾下パストーレ分艦隊が偶発的な戦いに巻き込まれたのは宇宙暦786年3月10日のことであった。

 その戦いは第4艦隊とイゼルローン駐留軍との遭遇戦である。この遭遇にはとある貴族が引き金となっていた。
 ダウリス・フォン・エッフェンベルク子爵がそれである。彼は同盟への亡命を画策した。彼がブラウンシュバイク公の血族を不慮の事故で殺してしまったことが発端であったが、それに恐れをなしたエッフェンベルク子爵がイゼルローン要塞経由で亡命する過程で、軍の機密を持ち逃げしたことで話は軍を巻き込む事態に発展した。自らの持ちうる財産を持っ
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