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Muv-Luv Alternative 士魂の征く道
第二九話 白雪の英雄
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かこん、とシンと張りつめた静寂の中に水のせせらぎに混じり時折鳴り響く添水の竹が打つ音が響く。
斑鳩家の屋敷、その中庭に接した客間に通された其処には三人の男女が居た。
「………」
「………」
白き斯衛の軍装に身を包んだ二人の男女、そして紅の軍装を纏った少年が一人。
白き斯衛の男の方はまるで寺にでも飾られた修羅像のように其処にあるだけで静かな圧力を放ち、それに付き従う女のほうは凪のようにその重圧を受け流している。
まるで二人が揃うと沢の岩を削る渓流とその傍に生えた楓の木の組み合わせを連想させる。
(現代の道雪、甲斐朔良……そして、甲斐姫の再来、今井智絵―――どちらも斯衛に名高き英傑だ。)
紅の少年、真壁清十郎は英雄が二人も集められたことに驚きと緊張を覚えた。
愛刀:千鳥にて雷を切ったという伝承から雷神の異名を持つ武将。立花道雪、武御雷の雷と、雪の白色を掛けてその勇猛ぶりからそう呼ばれるようになったと聞く。
そして、その傍に在りき同じく白き武御雷を駆る女性衛士……かつて己を妻にと迫った武将を射殺した後の豊臣秀吉の側室となった甲斐姫の伝承と名を懸けてそう呼ばれるようになったらしい。
元斯衛軍第三連隊所属、京都の宮城城防衛線から塔が島城の数か月間の籠城戦を戦い抜いた歴戦の猛者。
それが此処に一緒に集められたということは彼等と共に任に就くということは瞭然であった。
現在も激戦が続く九州の守りの一翼にして東海道の守護者。
あの黒き狼王や、白き妃狼、音速の男爵。かつて清十郎が出会った英雄たちと同じ存在だ。
そんな英傑と、自分のような新兵を集めるとは一体どういうことか……と真壁家の主の意向を図り切れず疑問を抱く。
そんな時だった、一人の真紅を纏う斯衛軍人を伴った青年が現れる。
五摂家が一、斑鳩家現当主―――斑鳩崇継。
「諸君待たせたね。ここは公式の場ではない、ゆるりと寛いでくれ」
「「「ははっ!」」」
斑鳩公の言葉に答える三人、いかに寛げと言っても飽くまで作法に凝るなというだけであり、こういう場に不慣れな清十郎に対する気遣いであるのは明白。
格式は依然として有効のままだ。現に斑鳩公は上座に、真壁らは格式通り下座。
「お館様、帝国斯衛軍第24連隊所属、甲斐朔良中尉並びに今井智絵少尉に御座います。お館様に於かれましては―――」
「よい、斯様な世辞を聞くために卿らを集めたのではないからね。」
「はっ」
「何分、縛られるモノが多い身の上だからね。偉そうな振る舞いは許してほしい。」
白き斯衛、甲斐中尉と言葉を交わす。
剽軽、とも取れる立ち振る舞いだが高貴なる血統に相応しい風格を纏っているのは疑いようのない事実―――こういう本性の見えない人間こそが最も恐ろしい生き
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