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Muv-Luv Alternative 士魂の征く道
第二九話 白雪の英雄
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物だ。
その視線が清十郎を捉えた。
「そして其方は真壁清十郎中尉だね。兄君はよく私を支えてくれている……口うるさいのが玉に瑕だがな。」
「ならば口うるさくさせないでください―――久しいな清十郎。」
「こうは言っていますが、お館様のお役に立てているのは兄の悦びです。本当は忠に篤い性格ですから。」
「大層な口を効くようになった、欧州への留学は意義があったと見えるな。」
「助六郎兄さんも息災何よりです。兄さんの教えもちゃんと小官の糧となっています。」
兄弟の会話、清十郎にとって9人の兄や父、祖父の言葉はどれも重き格言であった。
初陣にあってもその教えに救われた面も多く、あの欧州でのツェルヴェルスの戦いをその目で直に見たのは非常に大きな経験だった―――それが清十郎の中で融合・醸成し死の八分を生き残らせる大きな一因となっていた。
そんな挨拶が一区切りついたところで甲斐中尉が本題に切り込む。
「して、閣下。我々を集った理由のほどをお伺いしても宜しいでしょうか……既に知に富んだ真壁、勇猛で知られる藤原士など閣下の周囲の警護は万全と知るところでですが。」
「そうだね、此度君らに警護してもらいたい人物は他にいる。―――私が直々に斑鳩に招き入れた人物で、私の義理の弟だ。」
重要人物であると強調する斑鳩公―――風の噂には聞いていた。
武家が養子をとるのは然程に珍しいことではないが、それが跡継ぎでさえ無くしかも摂家となれば話は別―――その能力を欲しがれば臣下の武家の者との婚姻を行わせたうえで重用するのが普遍的だ。
にも拘らず当主自らが養子として招き入れたというのは些か以上に特殊な事例だ。
「諸君等の役目は、その身命賭して彼奴の盾となりその命を守護することにあると同時に、その元で新たな戦争の開闢を知り、来るべき
戦時
(
いくさどき
)
に備え日本帝国に貢献することだ。」
「新たな戦争……ですか?」
思わず聞き返した清十郎に斑鳩崇継は意味深な笑みを返すだけであった。
東京都瑞穂町 石河島梁重工:瑞穂工場
斑鳩崇継からの直々の拝命、それを受けた三人は真壁助六郎に連れられて戦術機整備拠点の一つである石河島梁重工の工場へと赴いていた。
BETAによる本土蹂躙、それにより光菱は元より川崎重工も開発拠点の多くを失っており、新たな整備・開発を行うための拠点を探していた。
其処で白羽の矢が立った工場の一つが此処であった。
元から跳躍ユニットのエンジン部の生産・整備を行う富極重工の下請け工場として機能していたが横浜陥落に伴い東京の守りが重要となる中、その支援のために一大整備拠点として大規模改修がされた工場の一つである。
そして、防衛線が日本海沿岸に移った後も輸送などのコストから前線
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